東ティモール政府と、同国の石油会社は、ガス田開発のパートナーを積極的に探しているところだ。ガス田の開発は東ティモールの国民にとって正真正銘のグッドニュースだが、同国が選ぶパートナー次第で、欧米諸国は痛手を被ることになるかもしれない。
ひとつの可能性として、中国は東ティモールとの「協働」に強い関心を示している。米国の外交問題評議会シニアフェローであるジョシュア・クランジック(Joshua Kurantzick)によれば、東ティモールは「活気ある民主主義社会」だ。
東ティモールにとって、中国とのパートナーシップは、中国がガス田開発への投資と引き換えに、大規模な採掘権を要求してくるという、蓋然性の高いシナリオと直結するものだ。これまで中国は、他国とのパートナーシップにおいてもそうした要求をしてきた。
もうひとつの問題として、中国と欧米諸国の関係が悪化するなかで、中国がもし新たに巨大ガス田へのアクセスを獲得すれば(当然ながら固定価格となり、経済制裁や禁輸措置とは無縁のものになるだろう)、米国をはじめとする欧米諸国は、中国への対抗手段のひとつを失うことになる。
東ティモール政府と開発関連省庁は、環境への配慮や領海の保全といった、極めてまっとうな主張を述べている。東ティモール国民の多くは、依然として漁労で生計を立てており、沿岸部と領海を汚染から守ることは、同国にとって単なる口上ではない重要な課題だ。
中国が勢力拡大を加速させている状況は、東南アジアの政治力学をかき乱しており、米国政府はこうした変化への対応に後れをとっている。世界地図のなかで東ティモールがどこにあるのか、正しく指差せる米国民は多くないだろう。しかし、同国のガス田開発の取り組みを支援することは、経済的にも地政学的にも、米国の国益にかなうものだ。
(forbes.com 原文)