天井知らずの価格上昇により、世界各地で天然ガス生産への投資熱が高まっている。新たな供給源の誕生と、価格高騰による需要破壊によって、市場価格は遠からず従来の水準に落ち着くのではないかと期待されている。
そんななか、天然ガス市場に本格参入を果たし、価格高騰の抑制に貢献することが期待されている国のひとつが、ティモール・レステとも呼ばれる東ティモールだ。
東ティモールは、圧政と暴力に苛まれた歴史をもつ。1975年までポルトガルの植民地だったが、その後インドネシア軍が侵攻し、実質的に同国に併合された。併合に反対する東ティモール人が抵抗するなかで、25万人以上が死亡した。
1998年、インドネシアの腐敗した権力者スハルト大統領が失脚したあと、東ティモールでは、独立の是非を問う住民投票が開催され、圧倒的多数が独立を支持した。独立国としての同国の歴史は20年あまりだ。
東ティモールの人口は100万人ほどで、経済は未発展だが、同国の領海には広大な天然ガス田が眠っている。天然ガスの埋蔵量は、控えめに見積もっても約2800億立方メートルにのぼる。海底地質を考慮すれば、実際にはその10倍に達する可能性すらあると指摘する専門家もいる。
東ティモールは、開発に慎重な姿勢を保っている。現政権は、ノルウェーの政府系ファンドに似た機関を立ち上げ、開発プロジェクトやその他の国民向けサービスの資金源とすることを検討している。ガス田の規模と同国の人口を考えれば、いずれは政府系ファンドを通じて、国民1人あたりでノルウェーに匹敵する収入を生み出せるようになるかもしれない。