ライフスタイル

2022.09.26 07:30

米SNSで流行中の「風邪薬チキン」「抗ヒスタミン剤チャレンジ」の危険性

安井克至

こうした事態を受けて、2020年9月24日にFDAは、ジフェンヒドラミンを説明書に書かれていない方法で服用することの危険性についての警告を国民に向けて出した。

OTC医薬品を巡るSNSチャレンジは、ナイキルチキンとベナドリルチャレンジだけではない。もちろん最後でもないだろう。すぐ手に入るものがそこにある限り、SNSで新しいことをするための使い方をどこかの誰かが見つけ出す。水をいっぱい入れたコンドームを頭の上に落とすことから、鼻でコンドームを吸い込むことまで、かつて人々がコンドームでやろうとしたことを思い出してほしい。だからFDAは「OTC薬品も処方薬も子どもの手の届かない場所に置き、鍵をかけて過剰摂取を防ぎましょう」と呼びかけている。さらにFDAは、親や世話係に向けてこういっている。「子どもたちと向かい合って薬の誤用の危険や、SNSの流行が深刻な被害、時には取り返しのつかない被害につながることについて話し合いましょう。過剰摂取はOTC医薬品でも処方薬でも起きることを、子どもたちに伝えてください」

もしあなたや誰かが幻覚、呼吸困難、発作、意識消失、誰かに「おまえそりゃ飲み過ぎだろう」といわれたり、その他何かの兆候や症状で薬を過剰に服用したことを知ったなら、YOLO(人生は一度切り)などといっている場合ではない。すぐに中毒事故管理センター(日本では日本中毒情報センターなど)や911(日本では119)に電話をするか、医師の診察を受けること。もちろん、発作や意識がなくなりかけているときにそうすることは困難なので、生命を脅かしかすかもしれない状況がさらに危険になる。そして、ネットを見ている人が何かしてくれることを期待してはいけない。ネット情報の何が本当で何がそうでないかは区別できない。返事はいつもこうだ「すごい発作だね。いい演技だ」

どれだけの人が一連のSNSチャレンジを実際に真似して実行しているかどうか、見分けるのは難しい。彼らがSNSでやっていることが演技なのかどうか、誰にもわからない。なぜなら驚いたことに、人は騙すことができるから。SNSで見たものを何でも信じるのは、DNCE(ディー・エヌ・シー・イー)の曲『Cake By the Ocean』を、海の近くでケーキを食べる話だと信じるようなものだ。さらにいえば、誰かがSNSチャレンジやトレンドだというからといって、多くの人たちがそれをやっているとは限らない。次のビッグトレンドは「クリアパンツ」だといい張る人たちがいたことを覚えているだろうか。完全に透明なパンツを履くことは、パンツを履く目的を履き違えているので、そんな「トレンド」がどこででも流行しなかったことは驚きではない。

そうはいっても、ベナドリルの過剰摂取で救急外来に行く人がいるということは、少なくとも一部の人たちはその手のSNSチャレンジをやろうとしていることを示している。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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