麻布競馬場氏の「ツイッター文学」に寄せられたレビューポエム
一方で、長編になると全く異なる作風が見受けられる。
9月5日に発売された麻布競馬場氏の小説『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』のレビュー欄を見てみよう。麻布競馬場氏はツイッターで小説を投稿している人物であり、息苦しい都会に生きる人々の鬱屈した心情を描く作風で人気を博している。氏の作品もまた、「ツイッター文学」と呼ばれているのだ。そのためか、レビュー欄には発売して間もないにもかかわらず、著書に触発されたと思われる強力な「文学」が多数投稿されている。以下一部を抜粋させていただく。
『今年で45歳になります。
アラフィフにはまだ早いけど、アラフォーとも言いづらい年齢です。
高学歴だけが自己肯定感の拠り所で、ヤラハタに嘆きました。
低い自己肯定感を持て余した裏返しで、何者かになれると信じてがむしゃらに走る意識高い系のアラサーでした。
何者にもなれないことに気が付き、あきらめ、折り合いをつけたアラフォーでした。
(中略)
いまでは失ってしまった、自己成長へのむしゃらなやる気。
残念すぎる語学力。
フォロワー数も増えないし、投稿を続けられないnoteにTwitter。
更新を途絶えさせてしまったブログ達
若くしてFIREした悠々自適な人達に、お隣を歩くクレイジーリッチ達
回収の見込みのない、S国に突っ込んでしまった0.75ビットコイン』
抜粋部だけではどのように評価しているのか見当もつかないかもしれないが、通読するときちんと作品への評価になっている。気になる方は是非読んでみてほしい。
このように、長編の「文学」には自嘲気味に人生を振り返る、私小説的な物語が多い。もしくはその逆で、私小説的な物語を伴うレビューにこそ、私たちは「文学」を見出してしまうのだろうか。いずれにしても、実体験に基づく膨大な回想や、個人的ながらも共感を呼ぶ感情の暴発……そういったものが化学反応を起こした結果、読む者に得も言われぬ「文学性」を届けているのだろう。