──アマゾンでは「パワーポイント禁止」に代表される文書に関する厳しい文化がありますが、Peatixでは?
原田:アマゾンほど厳しくはありませんが、「文章を書く」という文化そのものは参考にしています。
岩井:サービスを世界に拡張していることもあり、システム変更に関する伝達事項や作業依頼書など、あらゆることをいったん英語の文章に落とし込んで共有しています。その際、「こうしてください」だけではなく「なぜそうするのか」という意図も説明してもらいます。そうすれば「もっといい解決策があるんじゃないか」といった議論も、生まれやすくなりますよね。
岩井直文CSO
──アマゾン時代と今とでは、お互い、違うところがありますか?
原田:歳を取ってキャラクター的に丸みを帯びた傾向はあるし、それぞれのいいところが強調されてスケールされてきたかな。仕事人としてはお互いすごく成長していると思います。
アマゾンのような大企業とは異なり、僕らのようなベンチャーは言ってみれば小さなアンサンブルなのでごまかしが効かない。1人ひとりの、「できる」「できない」が際立ちます。今は皆がそれぞれの得意領域で力を発揮できているのが、本当にいい。
吉田:昔より、われながら人柄はマイルドになったかもしれません(笑)。加えてこの15年間で、「ピープルマネジメントがどうあるべきか」を、体験的にも理論的にも研磨してこられた。そこは、Peatixに貢献できるスキルだと思っています。
新陳代謝は「職責のチェンジ」から
──「アマゾンは新陳代謝が強み」という話がありましたが、Peatixではどんな新陳代謝が行われていますか?
藤田:われわれの新陳代謝は、主にロールチェンジ(職責の変更)によるかなあ。
岩井:たしかに、長く働いている人には、職責が何度か変わっている人が多いです。
アマゾンには「インターナル・トランスファー(社内転職)制度」があります。ある社員が特定のポジションでハッピーでなく、結果を出せなかったとしても、職責が変わると別人のように活躍するパターンを、僕も何度も目にしてきました。なので、そこはわれわれも参考にしています。新しい採用ポジションが生じた場合は、社外に採用をかける前に、まずは社内を見渡します。
原田:わが社はまだグローバルで90人に満たないぐらいなので、一人ひとりが能力を発揮できていると思うし、新しい部署ができたら「誰がその仕事に向いているのか」を把握できていますね。ただ組織は大きくなっているので、いずれはよりシステマチックにやらなければならない時期は来るでしょう。100人から、せいぜい150人ぐらいが、直接目を配れる限界ではないでしょうか。
岩井:卓さん(原田氏)はまだ、応募者全員に面接していますね。
原田:そうだね。どんなに能力があっても「Peatixに合わないな」という人もいますから、そこを見抜くのは、企業文化を育てていくうえで大事な要素だと思います。