ビジネス

2022.09.24 12:00

1本38万5000円の日本酒「零響」が、飛ぶように売れる理由


ひとりで何本も「まとめ買い」


内も外も、まさに「最高峰」の名に相応しい日本酒の「零響」。この最高級の日本酒が、コロナ禍や円安の影響で、さらに売れ行きを伸ばしている。

「『零響』を買われているのは、チャーター機で来日し、最高級ホテルのワンフロアを貸し切るような、『超』がつくほどの富裕層の方々です。そのような方々も、コロナ禍で来日が難しくなり、日本での旅を楽しむことができなくなりました。その代わりに、私たちのサイトで買ってくださるようになりました」(駒澤氏)



1本で38万5000円という高額なのだが、富裕層にとってはこの価格はまったく問題にならないようだ。アジアの富裕層はこの「最高峰の日本酒」を、ひとりで何本も「まとめ買い」するという。

「親戚や友人に配るために、数十本まとめて買われるお客さまも多いですね。リピーターとなるお客さまが多いのも、『零響』の特徴です」(駒澤氏)

ではなぜ、さくら酒店はこの最高級の日本酒を年に100本単位で捌けるのだろうか。

「当社の販売サイトとは別に、『零響』のランディングページ(検索エンジンでの検索結果や広告などを経由して、訪問者が最初にアクセスするページ)をつくりました。それにより、富裕層の間で『零響』が口コミで広がり、ランディングページを経由して問い合わせがきて購入につながるという流れができています。敢えて広告はしていません。富裕層が逃げてしまうかもしれないという懸念があるからです」(駒澤氏)

「マイナス5℃」へのこだわり


さくら酒店の創業は2013年。「老舗」の多い酒販店のなかにあっては、「新参」の部類に属する。だが、「零響」の新澤醸造店や、2016年の伊勢志摩サミットで「乾杯酒」に採用されて人気を博した「作(ざく)」の清水清三郎商店など、名だたる酒蔵の日本酒を取り扱っている。

同社はどのようにして、引く手あまたの有名酒蔵の信頼を得て販売を任されたのだろうか。酒蔵からの「信頼の礎」となっているのが、細心の注意を払った日本酒の取り扱い方だ。

駒澤氏とともに、さくら酒店の代表取締役を務める近藤悠一氏は、日本酒の取り扱いへのこだわりを次のように語る。

「私たちは最高級の『零響』だけではなく、多くの日本酒をマイナス5度に保った専用冷蔵庫に貯蔵しています。海外に輸出する際も、マイナス5度を保ったまま届けるようにしています。この温度にこだわるのは、日本酒の劣化を最小限に留める温度だからです」(近藤氏)


さくら酒店 代表取締役 近藤悠一氏
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文=下矢一良

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