インドで偶然ビートルズに遭遇 1968年の出来事を追体験するドキュメンタリー

「ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド」(C) B6B-II FILMS INC. 2020. All rights reserved


インドで素顔のビートルズに出会ったことで、彼自身にどんな変化が起きたのか、そして、それはいまの彼にどんな影響を及ぼしているのか、それらがロンドン、リバプール、ムンバイ、ニューデリー、そしてリシケシュと1968年の出来事を追体験する旅を通して描かれていく。

作品では監督・脚本・製作も務めるサルツマンは、ビートルズ研究家の第一人者であるマーク・ルイソンとともに、マハリシのアシュラムがあった場所を訪ねて、かつて彼が目撃したビートルズの創作の現場を検証する。


9/23(金・祝)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー (C)B6B-II FILMS INC. 2020. All rights reserved

ビートルズが1968年に発表した通称「ホワイト・アルバム」という30曲入りのアルバムは、多くの曲がインドで書かれたと言われているが、その曲数についてサルツマンとルイソンが論争するシーンなどはとても興味深く、彼らの音楽を研究するうえでも一級の記録になっている。

ビートルズがインドにまで赴いて修得しようとしたマハリシの超越瞑想については、この作品の製作総指揮も務める映画監督のデヴィッド・リンチが示唆に富む発言を寄せている。また、当時、インドへの旅に参加したジョージの最初の配偶者であるパティ・ボイド(のちにエリック・クラプトンと結婚する)などの証言もあり、このような関係者のコメントも耳に新しいものばかりだ。


デヴィッド・リンチ(C)B6B-II FILMS INC. 2020. All rights reserved 

本作は、サルツマンが半世紀以上も前にインドで出会ったビートルズの解き放たれた姿を描きながら、そのプライペートな創作現場も目撃し、彼自身が自らを再発見する内容ともなっている。そのあたりが単なる音楽ドキュメンタリーとは一線を画する、深く観る者の心にも響くところなのかもしれない。

ちなみにビートルズが超越瞑想を学んだアシュラムは、毀誉褒貶(きよほうへん)の激しかったマハリシの人生を反映するかのように、その後1990年代には廃墟となっていたが、現在は「ビートルズ・アシュラム」として、多くのファンが訪れる人気スポットとなっている。

連載:シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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