そこで積極的なリサイクルアルミの活用を進めると同時に、製造時に酸素を排出する手法を実用化し、2021年の16インチMacBook Proや2022年のiPhone SEから「低炭素アルミニウム」として採用し始めた。
常に心の片隅で、環境に良いことを意識し、アップルの英智によって問題解決が進んでいる。そして、世界中で使われるアップル製品に波及することは、確かに米国の環境保護に留まらない、大きな影響をもたらすクリエイティブなポジションといえる。
AirPods Pro(第2世代)の環境対策に関する説明。レアアースなどの素材の100%リサイクルや、2030年までに製造に関わるカーボンフットプリントをゼロにする目標などが書かれている
実際、どのくらい影響があるか?
では、この機能がどれだけ効果を発揮するのだろうか。
米国におけるエネルギー源のうち、再生可能エネルギーは12%。そのうちの4割がバイオマスエネルギーとなる。自然エネルギーの最大勢力は風力で、再生可能エネルギーの27%を占める。
iPhoneを充電するタイミングは、多くの人にとって寝ているときだ。夜間に利用できるクリーンエネルギーは風力や水力、地熱などであり、太陽光発電のエネルギーは使えない。
そう考えると、今回のClean Energy Chargingのインパクトは非常にわずかなものになることが予想される。しかし、そうした機能の存在を知ることで、人の行動を変えるには十分な動機づけになり得る。
今まで夜充電していたが、太陽光エネルギーが潤沢な昼間職場で充電をしたら良いのではないか? そういう行動パターンは可能なのか? iPhoneに限らず、他の家電や電気自動車の充電タイミングを変えるかもしれない。
そうした変化のきっかけを作り出すことの重要性を、アップルそしてリサ・ジャクソンは知っている。そしてアップルには、ハードウェアとソフトウェアを駆使してアイデアを実現する方法もある。
「やりたいことは、常にたくさんある」と話していたジャクソン。世界で最もクリエイティブといわれる企業の中でも、最もクリエイティブなポジションから、次はどんなアイデアを世に投げかけるのだろうか。