リサ・ジャクソンは2013年にアップルに入社した黒人女性の化学者だ。前職はオバマ政権における環境保護庁の長官というキャリアとなる。そんな彼女がアップルに参画したとき、CEOのティム・クックからこんな言葉をかけられて、より大きな仕事ができると納得したという。
「米国の環境を守るか? 地球を守るか?」
この口説き文句は、スティーブ・ジョブズが当時ペプシのトップだったジョン・スカリーをアップルに誘うときに発したとされる「このまま一生砂糖水を売り続けたいか? いっしょに世界を変えたいか?」に勝るとも劣らない強烈なフレーズだ。
アップルで最もクリエイティブなポジション
リサ・ジャクソンは、自分が取り組んでいる環境が、アップルの中で最もクリエイティブな場所だという。
アップルでクリエイティブといえば、ジョナサン・アイブが指揮してきたデザインチームのことを思い浮かべるが、インタビューを行った2018年の段階でクリエイティブの中心は環境に移行していたのかもしれない。
ジャクソンのもとには、アップルのあらゆるチームや社員から、少しでも環境負荷を軽くするアイデアが絶え間なく届くという。それはチップのシリコンの電力消費の話から、製品の素材のリサイクルのアイデア、小売店の袋の話に至るまですべてだ。
その過程で、アップルは小売り店を含む世界中の拠点で使う電力を再生可能エネルギーに転換した。そして2030年までに、パーツの製造や組み立てに関わるサプライヤーの使用電力も、再生可能エネルギーへの転換を目標としている。
iPhoneをはじめとするアップル製品はアルミニウムの外装が用いられているが、丈夫で加工しやすく劣化しにくい、つまり長持ちさせることができる点がメリットだ。しかし製造過程で大量の電力と二酸化炭素を発することは、日本では小学校の社会科で習うほど当たり前のことだった。