この機能は機械学習を駆使し、その人が住んでいる地域において、より環境負荷の少ない電力源が利用できる時間帯に充電することで、iPhoneの充電のための温室効果ガス排出を低減させる機能だ。そもそも、なんでこんなことができるのか。
実は以前からiPhoneには、充電の最適化を行う機能が盛りこまれていた。2019年にリリースされたiOS 13以降、日々のユーザー一人ひとりの使い方をiPhone自身が学習した上で、100%充電が必要になるタイミングをめがけて充電を完了させる機能だ。
そのため、充電プラグを差しても必ずしもすぐに100%充電されないことがある。筆者のiPhoneの場合、例えば夜寝る前に充電しておくと、朝起きて出かける少し前、午前5時頃にフル充電が完了するよう、自動的にスケジュールしてくれるのだ。
これによって充電し続けてムダな電力を使う必要はないし、フル充電になってなお電力を注ぎ込んで電池を劣化させる心配もない。
今回のClean Energy Chargingは、その拡張版と位置づけることができる。これまでの利用傾向に加えて、電力源の環境負荷が低いかどうかを充電制御の条件に加えるというものだ。
iPhone 14はバッテリー持続時間を向上させ、充電頻度を減らしながら、高度なバッテリーと充電の管理機能を備える
ある女性化学者の理想
この機能の存在を知ったとき、アップルのある役員の顔が浮かんだ。それは、環境問題などに取り組むバイスプレジデントを務めるリサ・ジャクソンだ。
同氏にインタビューをしたとき、いくつかの非現実的、あるいは理想ともいえるゴールについて、熱っぽく語っていたことが印象的で、そのうちの1つに「世界中で使われるアップル製品で使う電力のカーボンフットプリントをゼロにする」というものがあった。
正直なところ、それを聞いたときは半信半疑を通り越して、そんなことできっこないと思っていた。世界中で15億台もあるiPhoneのインストールベース。その1台1台の電力をクリーンエネルギーに変えるなんて途方もないことであり、そうありたいと願う一方で、絵空事だという諦めも筆者の中にはあったのだ。
それだけに今回のClean Energy Chargingには、頭を殴られたような衝撃を受けたのだ。