テクノロジー

2022.09.14 07:30

ハーバード大の学生が糖尿病治療の常識をディープラーニングアルゴリズムで覆す


もう1つ、このパラダイムシフトには、保険者が不可欠なプレイヤーであることも忘れてはなりません。特に、臨床的に検証された大量のデータ、つまりEHRデータと請求データの両方から得られる洞察によって患者のプロファイルを完成するAIベースのソリューションから、保険者は大きな恩恵を受けることができます。私たちは、患者の健康履歴に深さを加えることで、個々の患者の進行パターンをよりよく理解することができるのです。

――具体的には、糖尿病などの代謝疾患の治療には、保険や自己負担で年間どれくらいの金額が使われているのでしょうか?

ニガムとサン:米国における糖尿病の年間コストは3270億ドル(約47兆円)です。そのコストの大半は米国の保険者が負担しており、処方的アナリティックスに基づく、より費用対効果の高いソリューションに対する大きなニーズがあることを意味します。

――代謝疾患の患者を治療するために、どのようにBasysを医療機関の既存のワークフローやプロセスとシームレスに統合したのでしょうか?

ニガムとサン:従来の既存EHRとの統合に長い時間がかかることを踏まえ、私たちのサービスはEHRがあってもなくても使えるように意識しています。私たちは、どのような病院や保険者のシステムとも統合できる、スケーラブルで相互運用可能なプラットフォームを持っています。

――適切な治療によって患者の代謝の健康状態がどのように変化するかに関するBasysのディープラーニングアルゴリズムの検証には、どのような課題がありますか?

ニガムとサン:まずは、良い習慣の採用です。そのために、チェンジメーカー、医師、保険会社と提携しています。つぎに、食事や運動などのマイクロデータの収集です。食品はまだ測定が難しい存在ですが、1つのリスク軽減戦略として、デバイスやハードウェアの会社と提携しています。私たちは、最大かつ最も臨床的に検証されたヘルスケアデータセットにアクセスすることで、本質的な競争力を獲得しています。

また、創業者がハーバード大学でヘルスデータサイエンスを学び、ボストンのヘルスエコシステムで働いた経験があることも、強力な付加価値となっています。さらに、世界最大の糖尿病研究所を率いたビジネスリーダーや、数十億ドル(数千万円)規模のスタートアップを創業した経験を持つ者など、ヘルスケア業界で最も優秀な人材を集めていることも大きな強みです。これらすべての要素が、時間がかかり、規制も多いヘルスケア業界にありがちな課題やリスクを押し下げるのに役立っています。

――Basysの企業文化についてお尋ねします。フラットな階層と自律性を重視する環境を維持しながら、規制が厳しく構造化された業界のニーズに対応するためには、どのように規模を拡大していく必要があるのでしょうか?

ニガムとサン:私たちは、誠実さと倫理観を最優先する採用方針をとっています。加えて、医療にイノベーションを起こし、インパクトを与えるという情熱が重要です。適切な人材とチームを組み、彼らが輝くための適切なプラットフォームを提供することです。私たちは、チームメンバーの能力を高め、足並みを揃えることに多大な時間を費やしました。ビジョンとしては、レジリエントな企業文化を築き、挑戦を恐れず、常に優れたソリューションを生み出す最前線に立つことです。最も重要なことは、すべての人のためにヘルスケアをより良くするというコミットメントによって、私たちが団結していることです。

forbes.com 原文

翻訳=上西 雄太

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