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2018.02.12 09:00

糖尿病による認知力の低下、「予備軍」でも十分に危険

KaliAntye / shutterstock.com

血糖と脳機能の関係を調べた大規模な研究により、前糖尿病・糖尿病を患っている人々は正常な血糖値の人々に比べて認知能力が低下していることがわかった。研究結果は、血糖異常が心臓から脳まであらゆる健康を害するであることを強調するものだ。一方でこの研究は、糖尿病と認知能力の関係についてポジティブな面も示している。

これまでの研究でも、糖尿病と脳機能に関連があることは示されていた。しかし今回の研究では、ヘモグロビンA1c(HbA1c:ヘモグロビンに血液中の糖が結合したもの)のレベルが長期的な認知能力の低下につながっているとわかったことが大きい。

A1cの数値は、過去2〜3カ月の血糖値の平均を反映するものであり、一般的にA1cが6.5%以上の状態になると糖尿病と判断されることになる。A1cレベルが5.7〜6.4%で、糖尿病にまで進展するリスクが高い状態は前糖尿病と呼ばれる。

8年間の大規模実験の結果は?

英国で5000人を対象に行われた研究の参加者は、平均年齢66歳。血糖値が正常な人から、前糖尿病、糖尿病のレベルに達している人までが含まれていた。研究の最初に認知能力のテストが行われ、その後2年ごと、計8年にわたって記憶力、脳の実行機能(意思決定にかかるスピードなどに影響する)、総合的な認知能力が調べられた。

その結果、前糖尿病・糖尿病を患っている人々は、記憶力や情報処理スピードといった認知能力が、年々大幅に低下していることがわかった。喫煙やアルコール消費、コレステロール値、抑鬱、高血圧、年齢や性別、婚姻関係の有無などの違いを考慮しても、糖尿病が認知能力の低下をもたらしているという事実は変わらなかった。

研究者たちは、実験の参加者すべてにいくらかの認知能力の低下が見られたことに言及しつつも(加齢による自然の結果である)、前糖尿病・糖尿病の人々はより早い段階で認知能力の低下が始まり、かつ低下スピードも健康な人々に比べて速かったと述べている。

研究結果の最も怖ろしい点は、糖尿病予備群の人々に対する影響の大きさである。研究では、正式に糖尿病と診断されていないにもかかわらず、糖尿病患者よりも大幅な認知能力の低下が見られた人もいる。前糖尿病の状態は十分に危険なのだ。

「われわれの研究は、糖尿病と認知能力低下の関連性を裏付けています。さらに、正式に糖尿病と診断されているかどうかにかかわらず、HbA1cのレベルと認知能力の低下に相関があることも示しています」。チームはそのように結論づけている。

いいニュースもある

ポジティブなニュースは、早期から糖尿病に取り組むことによって、認知能力の低下スピードを緩められる可能性があることだ。

「糖尿病の初期段階で対処を行うこと、血糖値を戦略的にコントロールすることで、長期にわたる認知能力の低下を緩和できる可能性があることも、研究によって示されています」と研究者たちは付け加えた。

こうした研究結果は、われわれが血糖値のマネジメントに真剣に取り組まなければいけないという主張をサポートするものだ。前糖尿病になる前に取り組むことが理想的だが、たとえ糖尿病と診断されても、ライフスタイルを変えることで対処することは可能である。食事を変え、運動をし、体重を減らすことで、血糖レベルを改善することはできる。糖尿病は、脳の機能に影響を与える数少ない重大リスクのひとつだが、それに取り組むことは可能なのだ。

翻訳・編集=宮本裕人

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