衛星×光通信のポテンシャル
せりか:光通信は、ISSのほかにどのような場面で役立てられるのでしょうか?
ティナさん:まずお伝えしたいのは、地球観測衛星での利用です!地球観測衛星には様々な種類があり、それぞれの周波数帯の画像を撮影します。そしてその画像を衛星から地上で受け取り、解析することで、私たちはデータを得られます。
今は大きな地上局で衛星から画像を受信した後に、画像を解析する研究機関や企業に地上の通信網を使って送信するのが一般的です。光通信を利用すると、地上局を経由せず、ポイント to ポイントで画像が必要なところに送信できるようになるので、ユーザーはより迅速にデータを取得できるようになります。
せりか:衛星画像をより早くダウンロードできるようになれば、災害時の被害状況の把握にも貢献できそうですね!
ティナさん:関連して、発災時は通信インフラが断絶してしまうこともあり、衛星にはその場合に重要な役割を果たすことが期待されています。
2022年1月に、南太平洋に浮かぶ島国・トンガ王国の海底火山が大規模な噴火を起こしました。恐ろしいことに、噴火と津波の影響で海底ケーブルが損傷し、通信設備が機能しなくなってしまいました。
せりか:通信が遮断されてしまったことにより、現地の様子が伝わってこず、日本国内でも多くの人が心配していましたよね……。
ティナさん:このような災害に見舞われた地域に衛星通信を提供できれば、多くの人々が通信できるようになり、助けることができるでしょう。
それから、光通信の特徴として、周波数帯域の制約がないため、ネットワークの展開が早いことが挙げられます。電波通信はほかのユーザーの電波と干渉するのを防ぐために、周波数帯域が細かく管理されています。国別や軍事用、社会インフラ用、医療用など産業別に利用できる周波数帯域が割り当てられるのです。
さらに、周波数帯域を利用するには、国際電気通信連合(ITU)や各国当局などに申請を出す必要があり、通信を行う許可を得るのに数年かかってしまいます。光通信は、同じ周波数帯域を利用しても干渉しないので、調整を省くことができるのもメリットです。