宇宙技術が地上の暮らしにも貢献
光通信が利用されているのは、ISSや衛星だけではありませんよ。色々な場面で活用され始めています。
例えば、世界にはインターネットを利用できない人々が何十億人もいますよね。Googleの親会社であるAlphabet社は、通信インフラが未整備の地域に、光通信によるインターネットアクセスを提供する「Project Taara」を進めていて、2021年9月にはコンゴ共和国でサービスの提供を開始しました。
約4.5kmの幅のコンゴ川の上空を光通信で繋いでいる……つまり、私たちが宇宙や空で使っている技術を活かして、従来の方法では通信が不可能だった場所にも通信を提供しているのです。
せりか:インターネットが普及し、デジタルデバイド(情報格差)が解消されれば、先進国と開発途上国の教育格差を埋めることにも貢献できますよね。
ティナさん: そうですね!
そういえば、セリカは宇宙飛行士になる前は、医者だったと聞きましたよ。
レントゲンやエコー検査の結果など、大量の画像データから生成される医療データを転送するには、通信インフラが必要です。
例えば、アジアの離島の病院にいる医師が、ヨーロッパにいる専門医から診療の援助を受けるためには、医療データを転送したいという場面が想定できますよね。世界には遠隔地や島しょ部など、光ファイバーが整備されていない地域が多くあり、こういう地域では光通信の価値は大きいと思います。
さらに、医療データは個人情報が含まれるので慎重に扱わなければなりませんが、安全性が高い光通信であれば安心して利用できます。データを高速で転送できるのも、役立つポイントですね。
せりか:医療分野での貢献も期待されているのですね!人々がどこにいてもリアルタイムにコミュケーションを取れるように支援することは、教育や就労の機会や適切な医療へのアクセスを提供することにも繋がりますし、波及効果が大きいことだとわかりました。
ティナさん:そうですね。私たちMynaricは、多様性を大切にしています。男性も女性も、年配の方も若者も、科学者も企業のマーケティング担当者も、様々な人々が話し合うことで、先端技術のイノベーションが起こることを日々感じています。アイデアの多様性が未来のプロダクトを生み出します。
せりか:私も様々な経歴を持つ人々と一緒に働くなかで、アイデアの多様性の重要さを感じています。
(c)小山宙哉/講談社
より多くの人が場所にとらわれずに意思決定に参画できるようになれば、社会は豊かになっていくのではないかと思います。ありがとうございました!
せりか宇宙飛行士との対談企画第十弾は、Mynaricのティナ・ガトーレさんに登場していただき、光通信のポテンシャルについて議論しました。
次回のゲストは、JAXA海外駐在員事務所の小野田勝美所長です。JAXAの海外駐在員の仕事やアルテミス計画の見所をうかがいます。お楽しみに。