大離職時代を経て、米国では退職を先延ばしする人が増加

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中、米国では大量の労働者が予定を早めて早期退職した。いわゆる「大離職時代」だ。これにより、平均退職年齢が長期にわたってじわじわと上がり続ける傾向が断ち切られることとなった。

しかし、長く続いていたその傾向が、再び戻ってきたようだ。パンデミック中に退職した人の多くが、再び職に就いたり、再就職を検討したりしている。また、退職を先延ばしにする傾向が生まれていることを裏付けるデータもある。

米世論調査会社ギャラップは毎年、個人が抱えるさまざまな金銭問題についての調査を実施している。その一環として、まだ働いている人には退職予定の年齢を、すでに退職した人には退職した年齢を尋ねている。

1991年の調査では、平均退職年齢は57歳だったが、2022年は61歳と上昇している。また、退職予定の年齢は、1995年は60歳だったが、最新調査では66歳だ。

退職予定の年齢が最も高かったのは、世界金融危機のすぐあとの2012年で、67歳だった。しかしその後は、65歳と66歳のあいだを安定して推移していた。唯一の例外は2021年で、64歳に低下した。

ギャラップが21年間にわたるデータを分析したところ、退職年齢は有意かつ着実に上昇してきたことが明らかになった。55歳以上を5歳ごとのグループに分けたデータでは、各グループに占める退職者の割合が、徐々に5ポイントから9ポイント減少したことが示されたのだ。

減少率が最大だったのは、60歳から64歳のグループだ。2002年から2007年までは、同グループに占める退職者の割合は41%だった。しかし、2016年から2022年までで見ると、退職者の割合はわずか32%だ。

退職を先延ばしにする理由として考えられるのが社会保障だ。これから退職する人は、66歳に達するまで退職年金を受給できない(1954年生まれの人まで。それ以降は段階的に引き上げられ、1960年以降生まれの人は67歳)。

これに関連する別の理由として考えられるのは、退職年金の受け取りを、定年退職の年齢か、さらにその先まで遅らせるほうが合理的である理由を理解する人が増えていることだ。

退職前の労働者を対象にした他の調査では、「早期退職しても快適に暮らしていける蓄えがある」と考える人が少なくなっていることが明らかになっている。そのため、経済的な安定をより確かなものにしようとして、退職せずに長く働く人が増えているのだ。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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