テクノロジー

2022.08.30 08:30

「1人1台のiPad」を4000人に導入 日本の学校を支えるApp Storeの信頼性

安井克至
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乾氏はサイドローディングにより、App Store以外の場所からアプリをiPadにダウンロードできるようになると、生徒たちの教育環境が著しく悪化する懸念があると述べている。


セキュリティが確保されたApp Store以外の場所からiPadにアプリが導入できるようになると、ユーザーに関連するデータが端末から不正に取得されたり、悪意あるプログラムによる脅威にさらされる危険性を乾氏も指摘している

サイドローディングとはウェブサイトや第三者によるアプリストアなど、App Store以外の場所からアプリをiPadやiPhoneに導入するプロセスを指す。アップルではユーザーのプライバシーを保護するために、iPad、iPhoneについてははじめからサイドローディングができないようにデバイスを設計した。

マルウェアやハッキングによるリスクと隣り合わせになってしまうと、もはや学校でiPadを使うことが難しくなり、引いては生徒たちにとって貴重な学習機会が損なわれてしまうと乾氏は指摘する。

ITに関する正確な知識とオープンな議論が大切


iPadのある学校では、生徒たちが高校1年生になった段階で、情報管理について扱う授業を集中配置してITリテラシーに関する知識を重点的に学んでもらうことにも注力している。

学校でも多く議論になるのは「SNSの正しい使い方」であるという。以前、同校では携帯端末を生徒に持たせないことで、事件が起こることを未然に回避し、それでも何かが起こった場合は生徒に対して個別に指導を行ってきた。現在は生徒各自がiPadでSNSも使っている。乾氏は「生徒たちはSNSを良いことに使おうとする意識を持っている。生徒たちの間には、デジタルデバイスやSNSを使って「やっていいことと悪いこと」が何かという議論も自然発生的に生まれ、教師もその中に入ってオープンに指導ができている」と話す。実際にiPadを自由に使える環境を導入後、SNSに関連する大きなトラブルや、生徒への指導件数が減っているという。

iPadの導入当初は、デジタル環境で便利に学べるようになると生徒たちが学校に通う意義が損なわれるのではという不安の声も漏れ聞こえたそうだ。乾氏は「仲間といっしょにできることがあるプレミアムな場所」として学校を位置付けながら、生徒に対して学びを深められる場としての学校を積極的に提案することも教師の役割なのだと意気込む。

今後もGIGAスクールの展開を加速させるためには、土台となる安全・安心なITプラットフォームの確立が欠かせない。近畿大学附属高等学校・中学校による「iPadのある学校」の取り組みは、ITプラットフォームの導入による生産性の向上に現在も奔走する企業や、その他のさまざまな組織に多くのヒントを与えてくれるのではないだろうか。

連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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編集=安井克至

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