アップルはこのほど、ロンドン中心部にアップルストアの新店舗「Apple Brompton Road」をオープンしたが、プレス向け内覧会ではAR(拡張現実)を強化する姿勢をさり気なくアピールした。
英国で39番目となる店舗はとても豪華だ。内装にはおなじみの淡い色が使われ、魅力的な木製テーブルには様々なアップル製品が置かれている。窓際や店内のいたる所に樹木が設置されており、まるで屋外にいる気分にさせてくれる。店の正面にはシシリアンフィカスの木が12本植えられ、来店客を迎えてくれる。
アップルストアのあるブロンプトン通りは、ハイド・パークからほど近くにあり、周辺では素晴らしい園芸植物を目にすることができる。
店舗のショーウインドーに飾られた花や低木、動物たちをよく見ると、ブルーベルはエアタグで、バラにはアップルウォッチが埋め込まれている。このアップルストアは、2018年に取り壊されたブロンプトン・アーケードの跡地に建っている。入口には、当時の石柱がそのまま使われており、高さが23フィート(約7メートル)ある木製のアーチ型天井とよくマッチしている。
店舗の奥には、アップル製品の使い方などをユーザーに伝えるイベント「Today at Apple」を開催するためのスペースの「フォーラム」が設置されている。
この店舗には、アップルストアに世界で初めて採用されたものがもうひとつある。それは、テラゾー(人造大理石)を使った床だ。植物由来のバイオ樹脂でできており、サステナブルであるだけでなく、見た目も素晴らしく、滑らかでありながら滑りにくくなっている。アップルによると、この店舗は他の施設と同様、100%再生可能エネルギーで運営されているという。
ARエクスペリエンス「United Visions」
ARに話を戻そう。店舗の奥にある巨大なビデオウォールでは、英国の詩人、ウィリアム・ブレイクの作品の中で「エルサレム」に次いで有名な「The Tyger」をテーマにしたAR(拡張現実)体験「United Visions」を楽しむことができる。
このアプリは、アーティスト兼クリエイティブテクノロジストであるTin Nguyen とEd Cutting のコンビ、Tin&Edがゲッティ美術館のために制作し、グラミー賞を受賞したレコードプロデューサー、Just Blazeがサウンドトラックを担当した。このアプリは、最近アップストアで公開されたばかりで、一般に公開されるのは今回が初めてだ。
United Visionsは、iPhoneやiPadで見ることができるが、筆者はブロンプトン通り店で体験してきた。
スクリーンを見ると、目の前に生き物たちが現れ、床や壁で踊ったり、うごめいている。その様子は、iPadのレンズを通さないと見えないだけで、実際にそこにいるかと思うほどリアルだ。新店舗でのUnited Visionsの公開は、ARKitの提供を通じてAR開発支援に重点を置くという、アップルの姿勢を強く印象付けた。
最近では、ますます多くのアプリにARが用いられるようになっており、アップルが今後ARを重視していくことは明白だ。しかし、同社にとって短期的な目標は、新たにオープンしたブロンプトン通り店を成功させることだ。ロンドンを訪れることがあれば、チェックする価値は大いにある。