アップルではアプリとそのアップデートの内容について、1つひとつエキスパートの審査を経て提供するApp Reviewという独自のプロセスを設けている。App Storeのユーザーをマルウェアやサイバー攻撃、悪意のある詐欺行為から守るための仕組みだ。
アップルではユーザーの安心・安全なアプリ体験とデベロッパの成功を後押しすることを目的として、App Storeに提出されるアプリとそのアップデート、アプリ内での課金やイベントについてすべて人の手で審査を行う。デベロッパ向けには一般的な問題を未然に回避するための詳細なガイドラインが用意されている
アプリは公開後にも正しい運用が求められる
2020年からはApp Storeのプライバシーラベルと、アプリのトラッキングの透明性という2つのプライバシー保護機能を導入した。App Storeに公開されているアプリの詳細解説には、プライバシーに関するデベロッパの方針概要が「Appのプライバシー」としてラベル化された詳しい記述がある。現在App Store上のすべてのアプリにはラベルの掲示と、アプリが取得するユーザーのデータをどのように使うかを開示することが義務づけられている。
後者であるアプリのトラッキングの透明性については、アプリが他社の所有するアプリやウェブサイトを横断してユーザーの行動を追跡する場合、事前にユーザーの許可を得ることを求めたルールだ。デバイスに新しくインストールしたアプリを起動すると、デバイスの画面にはアクティビティ追跡の可否を訊ねるメッセージが表れる。ユーザーは「許可」または「App にトラッキングしないように要求」する選択を自ら採れる。
iPhone、iPadに新しいアプリをインストール後、最初に起動した際には画面にアプリによるトラッキングの可否を訊ねるポップアップが表示される
アップルはApp Storeのデベロッパとユーザーをスクリーニングし、問題行動については追放する措置も行っている。App Reviewの仕組みだけで不審なアプリの配信をすべて防ぐことは難しい。端末やサービスに搭載する、ユーザーのセキュリティとプライバシーを保護するための技術と仕組みは常時アップデートを続けている。
安全なApp Storeが「iPadのある学校」を根づかせた
企業や学校のように大勢の人が集まり構成される組織にITプラットフォームを導入する際、そこに安全・安心な使い勝手が担保されていることが選択の必須条件になる。
近大附属高校の教員である乾氏は、生徒たちがiPadを使って自主的に知識を得て、学びを深められる環境を実現するために「iPadについては非常にゆるい制限で、生徒の自由な利用を促がせる環境を実現したかった」と語る。
近畿大学附属高等学校・中学校による「iPadのある学校」のプロジェクトを推進する乾武司氏
同校ではすべての生徒がゲームを含む好きなアプリをiPadに入れることができる。またiPadを学習目的以外にも生活全般に使うことを促進している。「生徒がiPadを活用し始めてから、授業の課題として提出されるレポートやプレゼンテーションの内容は、先生がつくるものよりもかなり充実した」と話す乾氏の口もとに笑みがこぼれる。
学校の課題にも個人のクリエイティビティが反映できるようになると、自ずと生徒の学習意欲が刺激され、学ぶことへの主体性も育まれるという。ややもすれば生徒の知識量が教員のそれを追い抜いてしまうこともあるだろう。乾氏は「当初は脅威に感じていたが、生徒が学んだことを教えてもらい、共感できる楽しさがあることを知った。生徒たちが獲得した知識の位置づけを示して、次に進むべき方向を示すことが教師の仕事」なのだと持論を説く。
サイドローディングが学びの環境に悪影響を与える懸念
生徒たちに持たせるデバイスにiPadを選んだ理由を、乾氏は次のように語っている。「AppReviewによる審査を経た安全なアプリが揃っていること。App Store経由のダウンロードになるため、マルウェアへの感染リスクが低くハッキングツールも流通しにくいこと。これらのメリットは、生徒たちにアプリケーションを自由にダウンロードして使ってもらうという『iPadがある学校』のポリシーを成立させるために欠かせなかった」