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2022.08.29

パタゴニア創業者兼会長、イヴォン・シュイナードさん|私が尊敬するカリスマ経営者

パタゴニア創業者兼会長 イヴォン・シュイナードさん

宿泊施設や飲食店の予約サイト「一休.com」を運営する一休の社長が経営の師と仰ぐのは、サーファーで登山家、フライフィッシングの名手であり環境保護運動家としても知られる、世界的アウトドアブランドの創設者だ。


私が尊敬するのは……
パタゴニア創業者兼会長のイヴォン・シュイナードさんです。

シュイナード氏が立ち上げたパタゴニアは「地球を救うためにビジネスを営む」という企業ポリシーを徹底しており、ビジネスを進める原動力には強い目的意識があるように感じます。強い目的意識をもち、達成のために仕事に取り組むことは、自らの人生を豊かにする、意義あることだと思います。

結果として、その姿勢がプロフェッショナルな仕事を生み出し、パタゴニアの発展を支えているのではないでしょうか。


榊 淳 一休 代表取締役社長

パタゴニア創業者、イヴォン・シュイナードが2005年に出版した『社員をサーフィンに行かせよう』(邦訳は2007年刊行)。タイトルに使われ、パタゴニアを象徴する制度として知られるようになった「勤務中であっても自由にサーフィンに行ける職場」は、シュイナード自身の経営哲学、もとい生きざまを、象徴的に映し出している。

仕事中に自由にサーフィンをしてもよい働き方を実践するのは、言うほど簡単ではない。まず、社員は高い自律性を求められる。「今日はサーフィンに行けるか」を判断するためには、自らの業務量と時間をてんびんにかけながら、計画的に仕事を進める能力が必要になる。プロセスだけでなく、成果にコミットする覚悟も大切だ。いい波が来たらすぐに海に繰り出せるよう、職場の仲間とは良好な人間関係をつくり上げておくことが不可欠になる。

仕事とプライベートの切り分けを個人に委ねる環境を用意することが、自律性と協調性を兼ね備えた人材育成につながる。何よりも、当の本人たちの人生が豊かになる──。近年注目を集める、時間や場所に縛られない柔軟な働き方を、パタゴニアは1970年代から実現していたと言える。

答えは現場にある


社員をサーフィンに行かせるのは、仕事に遊び心を忘れないためというのもあるが、決して福利厚生の点だけで奨励しているわけではない。そこには、シュイナードの徹底した現場主義の哲学がある。

「パタゴニアの製品は、常に現場でのテストによってリスクを最小限に抑える」

自ら開発した製品を現場で使い、検証する。自分自身が本当に優れた製品だと実感しなければ、消費者からの支持は得られない。強い当事者意識が、事業家シュイナードを突き動かす原動力だ。
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文=蛯谷 敏 イラストレーション=ルーク・ウォーラー

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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