ライフスタイル

2022.09.02 12:00

日本は「太ってる幻想」大国? ナイキのぽっちゃりマネキンは海を渡るか

石井節子
2733

現代の20代女性の摂取カロリーは「終戦直後のそれより低い」?


ボディポジティブムーブメントの発端は、2012年に「自分を愛そう」というスローガンで始まった人種的マイノリティの女性たちによる運動だった。「#BodyPositive」というハッシュタグと共に、フェイスブックやインスタグラムでまたたくまに広がり、多くのセレブリティも賛同した。

偏った美を押し付けるのではなく、様々な体型の人を受け入れるメッセージは、体型にコンプレックスをもったり、体型のことでいじめられたりする人々の心に深く刺さった。

日本において、多様化の流れは様々な業界でみられるものの、カラダの多様性に関する欧米の動きと比べるとまだまだその広がりは小さいかもしれない。ダイエットや痩せていることに対しての煽り広告はあとをたたず、過度なダイエットが発端となるケースが多い摂食障害の数は1年間で22万人とされている

世界保健機関は体格指数(BMI=体重キログラム÷身長メートルの2乗)が18.5未満を「低体重(痩せ)」としているが、厚生労働省の2017年「国民健康・栄養調査」によると、痩せているとされる20代女性は21.7%にのぼる。20代女性の5人に1人が痩せすぎているのだ。同調査によると、終戦直後の20代女性の摂取カロリーよりも現代の女性の摂取カロリーの方が低いとされている。

アメリカでは、プラスサイズの女性たちによってムーブメントが広がりをみせた。一方で日本は普通体重の女性たちがそもそもコンプレックスを持ってしまっていることで、痩せすぎの女性が存在してしまっている。WHOが定める「普通体重」であったとしても「太っている」と認識されてしまっている危険がある。ボディポジティブに対する文化的背景の違いが日本での動きを鈍らせているのかもしれない。

それならば、フランスやイスラエルのようにWHOが定める基準を遵守したモデルを徹底して起用し、痩せすぎモデルの起用や極端なダイエット広告の規制をより強化するべきではないか。日本のボディポジティブムーブメントは女性たちの自己肯定感を高めるだけではなく、健康問題にも直結する重要な課題であるはずなのだ。



井土亜梨沙◎スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 コミュニティプロデューサー。森ビルを経てザ・ハフィントン・ポスト・ジャパンに入社、自ら立ち上げたプロジェクト「Ladies Be Open」で女性のカラダにまつわる様々な情報を発信するなど活躍。2018年よりForbes JAPAN にコミュニティプロデューサーとして入社、8社が参画した「#もっと一緒にいたかった 男性育休100%プロジェクト」では第1回Internet Media Awardsスポンサード・コンテンツ部門を受賞した。

文=井土亜梨沙 編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事