その影の立役者ともいえる存在が、クラウドソフトウェア「スペースリー」だ。これを使えば、360度VRコンテンツを誰でも手軽に簡単に制作・編集できるとあり、利用事業者数は5年半で7000超を記録。2021年(11月時点)には、不動産分野の大手100社の3割超が導入し、不動産業界のスタンダードになりつつある。メタバース(物理世界とデジタル世界の融合)も注目される今、VRは今後どういった使われ方をしていくのか、どんなことが実現可能なのか? スペースリー代表取締役の森田博和氏に話を伺った。
空間をキャプチャーし、ありのまま伝える
スペースリーは一言でいうと、空間データ活用プラットフォームのクラウドソフトで、前述の通り誰でも手軽に編集可能のサービスだ。だが、“空間データ”という言葉に馴染みもなければ、それを“編集する”というイメージも掴みにくいかもしれない。
具体的には、スペースリーのアプリを通じて、360度カメラで空間の各地点を撮影する。撮影したパノラマ写真をアップロードするだけで、写真が物件データと紐づき整理され、各空間を上下左右スムーズに行き来できる内覧用コンテンツが自動で作成される。用途に応じて、静止画像を空間内に埋め込むといった細かな編集も、アプリ上から直感的に行える。
不動産情報サイト「goodroom」でもスペースリーで制作したVR内覧用のコンテンツを活用している。特徴のあるデザイナーズ物件を多数掲載している同社では、こだわって作られた内装の細部をくまなく見られるスペースリーとの相性も良く、高い時には通常比1.5倍の問い合わせがあるという。また、店舗ではVRグラスを使ってVR内覧を楽しめると好評だ。
従来の物件のコンテンツでは、部屋と部屋がどう繋がっているのか? 実際の広さ/高さはどれほどか? 部屋の明るさは? といったことがイメージしにくかった。それらをリアルな体験に近い形で知ることができるのが、空間情報の利点だと森田氏は話す。
「物件というのは一つの単体のものではなく、様々な情報が入り混じったものです。空間情報では、それらをそのままキャプチャーし、ありのまま伝えることができます」
スペースリーがすごいのは、そうした空間コンテンツを誰もが簡単に作れることだ。専門知識は不要。画像の制作や編集は携帯のアプリでもできるほどシンプルで、直感的に行うことができる。