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2022.08.25 17:45

空家の成約数も増加、不動産「360度VR内覧」の詳細を見た

石井節子
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B to Bのその先まで目を向ける


スペースリーの導入の8割超は不動産業界(2021年11月時点)だが、最近では研修分野での活用が増えてきているという。特に多いのが製造業。製造工程の細部から一連の流れまでを現場の臨場感をもって伝えられるのはもちろん、全世界の拠点に向けて技術を効率よく伝達できる。

さらに最新の傾向としては地方自治体での導入だ。2022年4月には10の地方自治体で利用が決定。きっかけになったのは、広島県江田島市で市が運営する空き家情報サイトで活用されたこと。空き家情報は、移住目的で遠方から検索する人も多い。

「導入から1年で問い合わせが増え、空間情報だけで検討できるので無駄な問い合わせが減り、成約数は2.4倍になりました。これまで自治体が運営する同様のサイトでは、空き家情報を集めて掲載するところまでがやっとで、集客や成約までは手が回らないといった課題を抱える自治体さんは多いです。例えば、物件画像や情報が少なかったり、夜間は問い合わせできないシステムだったりと、利用者にとっては不便も多かったのです」

さらに自治体では観光分野での導入も注目されているとのことで、今後も用途は広がっていきそうだが、こうした広がりには、「利用者の使い方を見て気づくことも多い」と森田氏。現場のスキルと、スペースリーが専門とする空間情報の技術。そうした対話を重ねながら、変化するニーズにプロダクトをフィットさせていくところはサービス開発の醍醐味であり、常に壁でもあると森田氏は言う。

「不動産分野でも、最初は『何これ?』から始まり、認知が広まってくると、今度は『反響が増えたので、成約率を上げたい』という課題が出てくる。コロナ禍ではリモート文脈でニーズは増えましたが、今はその問題意識が薄れつつあり、今後は質のアップデートが求められています。僕たちは事業者さん向けにサービスを提供していますが、その先にエンドユーザーがいる、という視点が大切です。そこまで俯瞰して、いいサービスとは何か? を考えています」

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現在スペースリーが挑戦しているのが、360度のVR画像を3Dへ自動変換する機能。3D空間では立体的な家具・小物を配置したり、素材の異なる壁や床材を変える、といったことも可能だ。コロナ禍が契機となり「イエナカ」への関心は高まった。そのなかで、こうしたサービスは家探しをするユーザーから喜ばれ「ますます活用も広がるだろう」というのが森田氏の見解だ。
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