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2022.08.20 16:00

古くて新しい酒、どぶろくの魅力を再発見

Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は8月号(6月24日発売)より、「平和どぶろくprotptype#2」をご紹介。やわらかな甘みのある味わいの1本だ。


どぶろくと日本酒の違いってな〜んだ? という問いに答えられる人はかなりの日本酒通とお見受けする。正解は「濾すか、濾さないか」だけ。え、それだけ? と思われる方も多いかもしれない。色や、濁っていること、テクスチャーの違いなどは関係なく、米・米こうじ・水でつくる醪を濾せば清酒になるし、濾さずにそのまま飲めばどぶろくになる、というわけだ。

このどぶろくは弥生時代に端を発し、かつては農民がそれぞれの家で自作してきた歴史をもつ古い酒。が、現行の酒税法では自家醸造は禁止されており、また清酒とどぶろくでは異なる製造免許が必要なため、酒造会社がどぶろくをつくることも少ない。

つまり、どぶろくと日本酒はほぼ同種であるにもかかわらず法制上で分断されてしまったという不運な歴史を背負っている。どぶろくといえば密造酒という、どこかアンダーグラウンドなイメージが伴うのも、そのせいか。

しかし、近年ではどぶろくづくりにチャレンジする若いつくり手たちが多く登場してきた。さまざまな制約の多い日本酒ではなく、自由度が高いどぶろくづくりにはクリエイティビティや遊び心を発揮しやすい。

また、やわらかな甘みのある味わいから「飲みやすい」と、いままで日本酒を飲まなかった若年層にも受け入れられやすい。サラサラとスムーズな飲み口から、米粒が残るチャンキーなタイプまでテクスチャーも種々あり、ソーダ割りやロックなどの飲み方もいろいろ楽しめる......つまり一言でいうならば、ブームの兆しを見せているのだ。

このどぶろくに注目し、東京のど真ん中である兜町に醸造所を構えたのは「平和酒造」(和歌山県)だ。日本酒「紀土」や梅酒「鶴梅」などで知られる老舗酒蔵が、なぜいまどぶろくを?

「ここが、日本酒を普段飲まない方々への入り口になれればと思います」と語るのは、醸造所に飲食店を併設した「平和どぶろく兜町醸造所」の檀上絢子さんだ。「都市に暮らしているとお酒の生産現場に触れることは少ないかもしれませんが、ここならば扉一枚隔てた醸造所で醸した出来たてのお酒を味わっていただけます」

タンクから直接くみ上げた生酒の味わいはまた格別だろう。製造の現場にいながら飲むどぶろくは、米・米こうじ・水というシンプルな原料から酒が生まれるということの科学や神秘に思いを馳せることにもつながり、自然や人への感謝の念まで呼び起こしてくれる。

平和どぶろくprototype#2

容量|720ml
度数|11度
価格|1320円
問い合わせ|平和酒造 https://www.heiwashuzou.co.jp/
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photographs by Yuji Kanno|text and edit by Miyako Akiyama

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