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2022.08.18 06:30

ベストセラー教科書の無料化・オープンソース化が教育出版を変える


「この取引は、出版におけるシフトの第一段階の終わりを意味すると思います」と、OpenStaxの編集長デビッド・ハリスはいう。「出版社は今、自分たちの中核事業をプラットフォームサブスクモデルや学生直販モデルに適合させることを考え出そうとしています。伝統的な出版社は支配力を放棄して知的財産を共有し、コンテンツとリソースを複数のチャンネルで公開し、アクセスを増やすという考え方を発展させていると考えています」とハリスは語る。OERは「コンテンツとプラットフォームを持つプラットフォームプレイヤーになるという彼らの目標に合致します」

コンテンツとプラットフォームの融合は、対象となる補助ツールや教材を同じ場所に集め、共通の目的のために調整する。この場合、Cengage WebAssignとAktiv Chemistryという「市場で最も進んだコースウェアプログラム2つ」が、化学コース向けに特別に作られたクラス内学習・宿題用プラットフォームとして使用される。

「歴史的には、単一の出版社のプラットフォームで単一の著者を得ることができましたが、それは効率的ではなく、イノベーションを妨げコストを上昇させてきました。しかしコアコンテンツをサポートする質の高いリソースのエコシステムを開発できれば、より良いものになります」と、ハリスは述べ、「例えば、ジョン(・マクマリー)の仕事を彼らの優れた描画ツールでサポートできるAktiv Chemistryのような組織と提携できれば、より良いものになります」と続けた。

しかしそれでもこのケースでは、従来の出版社と著者は取引を行うために収入を諦めなければならず、OERにとって持続可能で何度も行うことができる方法だとは思えない。

それは事実だが、マクマリーとの契約は2つの点でユニークだと関係者はいう。1つはマクマリーの寛大さ。2つ目はマクマリーが、多くの著者に当てはまらない教育出版における大きな例外であるということだ。

「ジョンはベストセラーを生み出す作家の5%に入ります」とハリス氏はいう。「90%や95%に入るほとんどの作家は、わずかな収入しか得ることができません。OERの場合、制作中にお金を支払うため著者は収入を保証されます。ロイヤリティはギャンブルですから、95%の著者は最初から私たちのモデルの方がよいのです」

「実際、出版社が制作費を将来のロイヤリティと相殺するために、収入源がマイナスになっている著者を多く知っています」と、バラニークはいう。「私たちが始めたころは、人を探して、自分たちのことを説明しなければなりませんでした。しかし、それは変わりました。この契約によって、OERの品質や持続可能性に関する疑問はようやく解消されます。そして、私たちのような出版社を通じて教材を利用することがますます容易になるにつれて、OERはますます強くなっていくでしょう」

この動きは教育出版を変えるだろうか? そうかもしれない。学生にとって、実質的なコスト削減になるのだろうか? そうなる。教師が必要とする本が変わったり、新しい著者や読者が市場に現れたりするだろうか? おそらく。まさに大事件なのだ。

翻訳=上西 雄太

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