今井:現在、若者の貧困をめぐる問題は、とても多いです。特にコロナ禍では、問題が表出しすぎている状況です。とくに、22年になって大きいと思っているのが、2年間の長期化のなかで、滞納借金をしている比率がとても高い。D×Pに相談があった15〜25歳の若者の6割が滞納借金しています。
親に頼れない若者は、精神的に複数の問題を抱えて厳しい状況です。それに加え、円安やロシアのウクライナ侵攻によって、エネルギー価格、食糧価格、電気代の上昇が起きています。もともと厳しくて、2年間のコロナ禍でさらに厳しくなり、加えて、精神疾患の当事者になったり、環境変化が起きた親から暴言を受けたり、より金銭的な貧困が深まるといった状況がさらに深刻になっています。従来はひとつの問題だったのが、複数の課題を同時に抱えるようになり、それに加えて、この環境の変化は耐えられる状況ではない。今年はより深刻だと思っています。
村上:コロナ期間で、弱者はどんどん弱者になって、こどもの貧困やシングルマザー家庭などにしわ寄せが行っている。食料とエネルギーという家庭のインフラとなる領域の価格高騰は、本当に深刻な危機につながる。現場の声を聞くと「これからどうなるのだろうか」と思います。
今井:ライフラインや生活面の支出は、経済的に厳しい家庭ほどエネルギーや食料に使っている「率」が高く、価格上昇の打撃を受けやすい。当然、政府もいま動いていると思いますが、こども、若者の文脈だと「薄い」と思っているので、どのように強化していくかといいうことを訴えつつ、現場でも動かしていくしかないと思っています。
本当に食べ物を食べていないという声と、ガス・電気を止められているという話を、この数カ月で何回聞いたかわからない。D×Pの8万円という現金給付の金額の使い道も、家賃、電気代、ガス代、携帯代など、ライフラインを1回回復させるところでの使用が多いです。
今井:NPOだけでやっても、マスでの支援になりませんから。総務省の国勢調査によると15歳〜24歳の単独世帯は、198万世帯。そのうちの2割くらいが年収200万円以下ぐらいの家庭だと考えると、40万人近くいるわけです。D×Pでの支援は1000人くらいですから、限られてしまっている。
政府の支援がマスと考えると、僕らが訴えかけないと大きくは変わっていかない。政府へ訴えかけつつ、現場でアウトリーチしてくということは、どちらも重要ですね。そういう意味ではこれから取り組む、データ活用した政策提言につなげる動きはかなり重要になりますね。
村上:私個人として言うと、NPOだからできる支援はあると思います。現場に深く入り柔軟に動ける。そして、そこで得た知見をもとに、制度上の欠陥部分はしっかりと伝えていくことが重要ですし、社会全体としてすごくプラスだと思います。セーフティネットが本当に必要なところに広まるほうがいいですから。その意味で、データというのは、説得力があり強いですよね。財団とD×Pではそうしたデータ活用による政策提言に力を入れていきたいですね。
私は今年2月に代表理事に就任し、8月に発表した「政治家を志す10〜30代のパブリックリーダー塾」といった女性政治家を増やすための支援をはじめ、やりたいことがいっぱいあります。いまはひとつひとつやっていっている状態です(笑)。ただ財団としては、社会貢献をより力を入れていこうという方針なので、プロジェクトベースで、活動を広げていきたいです。