寄付は「社会をつくる資本」 NPO法人への寄付拡大、伴走強化

村上財団代表理事の村上玲(左)、認定NPO法人D×P(ディーピー)理事長の今井紀明(右)


村上:全国に広がっていけばいいですよね。行政も、現場まで職員を送って理解するという作業が難しいと思いますので、NPO法人と行政の連携による効果は大きいですよね。また、行政が公認されているのであれば、利用してみようという人も増えるという広がりもあります。

財団でも、大阪府と一緒に、「NPO等活動支援によるコロナ禍における社会課題解決事業」として、クラウドファンディングの取り組みをしています。新型コロナウイルス感染症の影響で顕在化した社会課題に対して、大阪府、村上財団、NPOで課題解決を図る取り組みです。採択されたNPOがクラウドファンディングで調達した金額に対して、村上財団が同額のマッチング寄付を行っています。3年間実施し、22年にはNPO7団体が採択されました。これからも3年間実施する予定です。

この取り組みについては、すごく効果が大きいですね。NPO法人は、行政と連携して取り組むことで信頼性が出てくる。一方、行政からすると現場をわかっている事業者との連携から生まれるプラスの効果、例えば制度を変えようという話などが出てきている。3年間モデルケースとして取り組み、効果的だったので、全国の地方自治体に広めていけたらと思っています。

成果として、NPO法人の活動が大きくなったというのはよく聞きます。たとえば、多胎児の支援をされている、NPO法人「つなげる」さんは、多胎児妊婦さんに多胎児用の母子手帳である「ふたご手帖」を無償配布し、オンラインの子育てひろばで交流できる場を運営するというのを、大阪府と連携して行いました。これがきっかけとなり、モデルケースとして認知され、他自治体との連携という流れも生まれました。レバレッジが効くという言い方もできるかもしれません。

また、行政側が出資の必要はなく、クラウドファンディングで周知して、必要だよねと思われると取り組みにお金が集まり、さらに同額を財団からも寄付するので、資金面でもサポートがある。NPOからすると、行政との連携で広がりが起きるという仕組みとして活動が大きくなる。 

今井:重要ですよね。行政も扱う課題が細分化し、国だけの責任にできない点もあるとも思っています。国会議員や官僚の方も問題意識をすごく持っているけど、すぐに動くことができなかったり、問題解決策が出てこないというパターンもある。民間から事例を出して解決していこうというのは、寄付という民間のお金だからできるというのは大きいと思います。

村上:確かに寄付の方が、柔軟に、かつ、スピード感を持って必要なところに支援ができるというのはありますよね。それに加えて、支援をベースに、「こういう支援が社会に必要だ」として制度として提言していくという意味で、NPO法人を支援する財団としては、社会が良くなることに一緒に伴奏させていただいていてありがたいですね。
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文=山本智之 写真=平岩享

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