──カウンセリングでは具体的にどんなことをしてきたんですか?
最初は「今の自分を感じていくこと」からはじまりました。カウンセラーさんに身に起きた出来事を話しながら、そのとき自分が何を感じたか、その感覚にとどまってみたり、その都度フィードバックをもらったりしています。たとえば、今私の話を聞いていて、胸が熱くなるのか、ムカムカしてくるのか、焦っているのか、自分の感情をたしかめてみてください。そうやって、頭だけではなく身体で感じていく練習をずっとしています。
私は「できていない」と自分を責めるのも得意だったんですが、カウンセラーが安心安全な環境をつくってくれました。できていることを客観的に確認してもらったことが極端にできないと思ってしまう自分に戻らないサポートになりました。その過程で自分の自己効力感が育まれていったんです。
「できなかったこと」ではなく「できたこと」に目を向けて、社会的な基準や自分の中の“普通”ではなく、事実に基づく自分のペースや基準に向ける時間をつくっていく。これからも自分との関わり方を育んでいきたいと思っています。
──自分との関わり方を見つけて育んでいくことは、大事だけれど難しくもありますよね。
今日やって明日効果が出るわけじゃないですからね。だからこそ、がんばっているかがんばっていないか自分をジャッジすることは一度横に置いて、小さくてもできていることを確認して、自分が感じていることをじわじわ感じていく。その積み重ねでグラデーションのようにできることや感じられることが増えていくと思います。
ネガティブに感じる感覚も、じわじわ受け入れていく
──ここからはみなさんからの質問をベースにお聞きしていきます。今の自分を感じていくときに、不安や妬みといったネガティブな感情とはどのように向き合っていますか?
ネガティブな感情ってすごく大事だと思っていて。たとえば不安があるから、この先に進んだら危険だって止まることもできる。生命維持をするために不安は必要な感覚です。自分の大切にしていること、されたら嫌なことに気づくこともある。嫉妬だって自分に無意識に禁止していることを教えてくれることだってあります。
私は不安を抑え込もうとする方がより意識が向いて不安が大きくなっていくように思います。不安をじわじわ感じて受け入れていくことで落ち着いたりできることを探すステップに移っていけるようになったと感じています。
──やりたいことがわかっていても、なかなか腰が上がらないという方から、彩帆里さんの原動力を知りたい、という質問がきています。
原動力、私もそんなにないですよ。休日とか、何もしないで溶けるようにダラダラしていることもよくありますし。やりたいと思っていても手がつけられていない仕事もたくさんある(笑)。重い腰を上げて無理矢理動いてもあんまり進まないんです。
やる気が湧いてこないときは無理やり動かず、しっかり休息を取ったり、何が心身をすり減らす要因なのかを整理したりする。そうすることで原動力が自然と湧き起こってくる。自分の心と身体のペースを大切にしながら物事に取り組んでいく方が、結果的に自分と仲良く、遠くまでいけると思っています。