孤独への対抗策はつながりだ
「つながりこそが燃え尽き症候群と孤独感への対抗手段なのです」。それがヘンの研究から導かれる避けられない結論だ(ヘンの個人的体験からもそれは裏づけられている)。「人と人とのつながりが、私たちをより強くしてくれるのです」と彼女はいう。「起業家として、あなたを支えてくれる職場のチームがないなら、別の方法でつながりを育む必要があります」
たとえば、パートナーとすばらしい関係を築くことを目標にすることもできる。大切な人を中心に考えることで、自分を社会的な支えの一部にすることができるのだ。
さらに、友人や家族と最低週に2回以上会う約束をすれば、さらに効果的だ。そうした約束を、仕事の打ち合わせと同じように、破ることのできないものとして扱おう。他の人とつながる時間を常に持ち続けることで、燃え尽き症候群になる可能性を大幅に減らすことができる。
また、ソーシャルネットワーク上で仕事の話をすることで、驚くようなイノベーションが生まれることもある。また同時に、(関連する)友人と仕事について話し合うことは、起業の山を1人で登っているように感じさせないためのすばらしい方法のひとつだ。
海外移住者から学ぶ
ヘンはまた「village effect(ビレッジエフェクト、村効果)」と呼ばれるものの利用を提言している、これはその言葉をタイトルにしたスーザン・ピンカーの著書から引用された考え方だ。たとえばそれは、スターバックスでバリスタにうなずく、隣人に手を振る、自分の犬の散歩をしてくれた人にハイタッチをするなどの、一見何気ないやり取りが含まれている。
「このようなちょっとした社会的な合図は、深い意味をともなっている必要はありません」とヘンはいう。「でも、そうしたものが自分が重要な社会の一員であることを感じさせてくれるのです」。大切なのは、毎日毎日、日がな1日オフィスにいることを控えることだ。その代わり、散歩に出かけて、すれ違う人たちと親しげに目を合わせてみよう。
「週に一度か二度、喫茶店に行って仕事をしましょう」そして隣のテーブルの人と笑顔であいさつを交わすのだ。「このような行動を日常的に行うと、感じていた孤独感や燃え尽き症候群が緩和され、柔らかくなることに驚かされることでしょう」
これはまさに、新しい国に移り住んだ人たちの行動といっしょだ。海外移住者は、知り合いのいない新しい環境に放り込まれる。彼らの心は、十分なリソースやサポートがないままでは安全ではないと自分自身に言い聞かせている。そして、新しい人と出会うために、自分の居心地の良い場所から一歩踏み出すのだ。起業家としても、同じように人のつながりを見つけ、育てることができる。
つながりのある起業家に幸あれ
社会的なつながりは、燃え尽き症候群を避けるために重要だが、その先にさらに重要なことが横たわっている。ヘンは「社会とのつながりが強い人は、孤立して孤独な人よりも長生きするという研究結果もあります」という。他者から認められることで、オキシトシンやドーパミンといった快感ホルモンが生まれる。
こうしたステップを実行することで、起業家は人と人とのつながりを育み、孤独を回避することができる。さらに、これらのステップを踏むことで、起業家は社会的の一員としての自分を確実にすることができ、自分自身とビジネスを成功させることができるのだ。