ライフスタイル

2022.08.07 12:00

日本に上陸した初の中国カーメーカーBYD「アットー3」に試乗した


しかし、外観はプレーンだと思ったら、内装の第一印象は、全く別世界。
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デザイン性は優れているし、使用される素材は程度の高いもので、メチャ凝っている。まるで開発費の70%以上室内のデザイナーに回されたというふうに解釈するのは僕だけかな。正直なところ、室内スタイリストは、ジムでトレーニングをし過ぎて、何時間も持ち上げたバーベルをイメージにインテリアをデザインしたように見える。何を見ても、そんな感じ。エアコンの吹き出し口やシフトレバー、それにドアハンドルなど、いたるところにトレーニングジム用のバーベルっぽいデザインが溢れているし、ダッシュボード自体も腕の筋肉をモチーフにデザインされている。

ドア内部の写真

キャビンの写真
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運転席に最初に座った時、異様な雰囲気だったけれど、すぐ慣れる。また、標準設定の赤・青・白の3色シートはとてもスポーティーで、なかなか良い印象を与える。同じシートに赤いパピングと赤いステッチを同時に入れるのは、金のかけ過ぎだと思ったけどね。それに、ドア・ポケットには、プラスチックのカバーではなく、ベースかギターの弦のような赤いラバーバンド3本が貼られている。その弦を弾くと、「ブ、ブーン」とベースのような音が鳴ったのには思い切り笑ってしまった。ちょっとギミックみたいなものだけど、可愛い。

ドア室内側の装飾

ダッシュボードの筋肉モリモリのデザインとバーベルのモチーフは今までにないデザインセンスだけど、やはり、初の中国自動車メーカーが上陸したばかりだからこそ、今までとは全然違うデザインの匂いがあって良いと思うね。

シフト周りの写真

でも、一番感心したのは、一つのスイッチを押すだけでセンターコンソールの巨大な12.8インチのタッチスクリーンを回すことができること。縦に設定したり、横に設定したりすることができる、わりと新しい試みは、多くのユーザーが面白がるだろう。インパネでiPadがグルグル回転している感じだ。また、コネクト機能のAppleCarPlayとAndroidAutoは、なぜか9月に加わるようだ。何で発表時期からついていないか不思議でたまらない。ディズニーとかネットフリックスとかゲームなどはこの画面には入っていない。Atto3の画面は通常のインフォテーメントのタッチスクリーンにすぎない。

パネルを回転させた写真
ディスプレイを横向きから縦に変えた状態。

走りはどうなのか。電池容量は58.56kWで出力は150kW/310Nmということで、航続距離は485kmとメーカー側は言う。しかしリアルワールドでは、400kmを少し回る程度のはずだ。0-100km/hの加速は7.0秒フラットなので、EVの中ではまあまあ速い方といえるかな。日産アリアと同レベル。BYDは新しいバッテリーパックを搭載している。電池・車体の強度向上に寄与する「ブレードバッテリー」として搭載され、電池の安全性をより高めているという。話によると、安全レベルは欧州車と変わらないそうだ。そう願いたい。

前から見たATTO3

20分程度の短い試乗だったため一般道しか走っていないけど、18インチのコンチネンタル製という大径タイヤを装着している割には乗り心地がよく、高速道の繋ぎ目などを踏んでも突き上げ感はほとんどない。また、ステアリングの重さもちょうど良かったし、問題なく狙ったラインを丁寧にトレースしてくれた。オーストラリアの同僚が向こうで乗ったら、ブレーキ性能はピーキーでブレーキを踏んだ時の反応は好ましくないとコメントしてたけど、僕が日本で乗った限り、そういう印象は受けなかった。ブレーキを2回ほど思い切り踏んでみたけど、しっかりとした制動力で完全に止まってくれた。また、スポーツモードに切り替えると、若干ではあるけど、加速性が良くなる。

さて、400万円あったらATTO3を買うか。それが大きな課題だろう。ルックスは若干コンサバでも、内装の華やかさ、航続距離の長さ、走りの良さ、それに400万円強の価格で店頭に並ぶと考えると、日本一安いEVに乗ろうと決める客も出てくるのではないか。唯一、全くテストできていないのは、信頼性だね。その真相がこれから明らかになる。今見ている限りは、良さそうだけどね。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

文=ピーター ライオン

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