中国に特化した上場投資信託(ETF)を手がけるクレーンシェアーズの最高投資責任者、ブレンダン・アハーンは、尚乗数科の株式は「ある意味、完全なミーム株」だと語る。IPO後も親会社の尚乗国際が95%超の株式を保有しているため、発行済み株式総数に比べて浮動株(実際に売買される可能性の高い株式)の数が非常に少ないほか、空売り勢に買い戻しを迫る「ショートスクイーズ(空売りの締め上げ)」も起きたとみられ、個人投資家たちがそれに続々と加わっているからだ。
「ウォールストリートベッツ」など個人投資家が集まる人気フォーラムをのぞいてみた限りでは、尚乗数科は数日前まで多くの個人投資家にとってあまり聞いたことのない存在だったようだ。彼らの多くは、同社の低い収益や、やたらと高い評価について警告する書き込みをしていた。
実際、規制当局への届け出によると尚乗数科の2021年の売上高はわずか2500万ドル(約34億円)で、大半はデジタル金融サービス事業の直接、間接の手数料収入だった。尚乗数科は今年2月に「スパイダーネット」と呼ぶメタバースプラットフォームを立ち上げたが、詳細についてはウェブサイトや届け出でほとんど言及していない。
尚乗数科も尚乗国際も株式の売買高は比較的少なく、これは値動きの荒さからすると異例だ。尚乗数科の平均売買高は110万株、尚乗国際は540万株ほどだが、3日はいずれも8万株ほどにとどまった。
空売り投資家として有名なジム・チャノスはツイッターで、「4000億ドル規模のミーム株については見て見ぬふりをするつもりなのか」「300億ドル程度の急騰だったゲームストップやAMCのときは議会の公聴会まで開かれたのに」と皮肉った。
オアンダのシニアマーケットアナリスト、エドワード・モヤは「香港のフィンテック企業がミーム株熱を呼び戻した。しかもその強化版だ」と述べ、今回もすぐに規制による試練に直面するだろうとの見方を示している。