ビジネス

2022.08.03

過熱する「Human Flourishing」研究「人間の潜在性に投資せよ」

ニレミア・コレクティブ共同創業者の奥本直子(写真右)とトランスフォーマティブ・テクノロ ジー共同創設者のニコル・ブラッドフォード(写真左)


注目を集める「Human Flourish」


Forbes JAPAN9月号(7月25日発売)では、トランスフォーマティブ・テクノロジーとニレミア・コレクティブの協力のもと、「創造性を高める注目のテクノロジー・スタートアップ10社」をリスト化した。Skillprintのほかに、オフィス各所に各々異なった自然の音を流すことで、まるでオフィス自体が大自然の中にあるような三次元の没入型体験を提供する「Spatial」や、XR世界への没入感を通してマインドフルネスを体験する「TRIPP」など、科学的に実証され、BtoBとして企業にも採用されているサービスも多い。

「コロナ禍がライフスタイルを変え、人々は人生において何が重要なのかを考えはじめ、自己実現する方法を模索し始めました。また、AIが広く世の中に行き渡るようになり、我々にもAIと共存する人間力が求められます。AIがすべてのデータを集め予測を行うことができるなか、人にしかないクリエイティビティ、好奇心、コミュニケーションスキル、コラボレーションスキル、批判的思考、非言語認知能力、人を巻き込むための自信の7つが、かつてないほどの重要になってきています。私たちは改めて、創造性の発露には何が必要不可欠なのか考える必要があります」(奥本)。

大学との協働も進む。前述のSkillprintはいくつかの大学の研究所と共同開発を進めるほか、博士号取得者が経営に参画する。また、学生からのニーズと、全米で広がる鬱といった社会問題を背景に資金が集まり、ハーバード大学やスタンフォード経営大学院では人文科学と社会科学を横断し、幸福や目的、価値観やコミュニティといった基本的人間性について研究を深め、人のパフォーマンスを最大化するための「Human Flourish」の講義が開設され、人気だという。

「一般的な心理学は問題を細かくカテゴライズするのみですが、Human Flourishでは実際に問題をどう解決するかを扱うため、アカデミアの世界でも注目を浴びるようになりました。それに加え、実際に大学の現場で学生の心の問題が課題となっているため、資金が集まり、研究が重ねられ、より強い枠組みになっています」(ブラッドフォード)

米国を中心に盛り上がる人間の潜在的可能性への投資と研究の動き。世界に広がっていくのか、注目したい。

「創造性を高めるテクノロジー・スタートアップ10選」は、Forbes JAPAN9月号(7月25日発売)に掲載されています。

文=岩坪文子、荒川未緒 写真=マーク・オリヴィエ・ル・ブラン

この記事は 「Forbes JAPAN No.097 2022年9月号(2022/7/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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