代表取締役CEOの星賢人は、2019年の「30 UNDER 30 JAPAN」に選出され、今年は同アワードのアドバイザリーボードを務めている。
2019年の受賞コメントで「LGBTechをメインストリームにしたい」と野望を語っていた星。あれから3年、社会環境はどのように変わったのか、話を聞いた。
──LGBTQにまつわる課題をテクノロジーで解決する「LGBTech」の現状は、2019年と比べてどうでしょうか。
すごく広がっていると思います。特にグローバルでは市場が急拡大していて、何十億もの利益を出すようなスタートアップが複数社出ています。日本でも、20歳前後の若い人たちがマッチングアプリ事業などでどんどん起業しています。億単位の収益をあげるNPOも出てきて、波が来ていると思います。
その背景には、大手金融機関にパラダイムシフトが起きていることが挙げられます。SDGsやESGの観点から、LGBTech領域へのサポートが手厚くなっているのです。
──ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に取り組む企業が増え、一般企業で求められる人材も多様化していますね。
そうですね。経済産業省が2022年5月に発表した『未来人材ビジョン』によると、2050年に生きる人材に必要とされる能力は、“革新性”や“問題発見力”などの「変化が激しい時代に対応する力」だそうです。これまでは、「ミスをしない」「責任感」「真面目」が重視されていたのですが、多様性を重視する方向にシフトしていることがわかります。
多様性のない場所ではイノベーションが生まれにくいことは科学的にもわかっているので、LGBTQを含めた多様な人材が活躍しやすい環境をつくることは必須です。
ただ、それに反対したり否定したりする人たちが表面化してきているのも現状で、昨今は「分断」が大きなテーマになっています。
実は、LGBTQの当事者にも「否定派」は少なくありません。私たちの事業に関して言えば、否定したり誹謗中傷したりしてくるのは、当事者の方が多いくらいなんです。「自分たちが商業利用されているのではないか」と感じてしまう方が一定数いるのは、現段階では仕方のないことなのかなと思っています。
それよりも、まずアクションを起こすことが大切です。それで叩かれたら、何がいけなかったのかを考えて、議論を深める。失敗を恐れず、当事者の皆さんと話し合いながらアップデートしていけばいいと思います。