2022年4月、長引くコロナ禍の中、日常生活が戻りつつあるフランスでは久しぶりに大規模なワインの試飲会が開催され、大勢の人で賑わった。その一つが、ボルドーのプリムールウィークだ。
この期間、ボルドーには、世界中からワイン商やジャーナリストが集まる。ワインのプロたちは、熟成途中の最新年のワインを一足早く試飲し、評価をし、ワインを買い付ける。こういったワイン評論家による評価が今後のワイン市場を左右する。
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プリムールは、初参加の筆者にとって、ボルドーのワイン産地としての伝統と魅力を再発見する機会となった。
今回はその時にお会いした、シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランドのGeneral Director兼醸造家のニコラ・グルミノー(Nicolas Glumineau)さんのインタビューをもとに、優れた生産者がトップクラスで在り続ける理由を探りながら、ボルドーワインについてお届けしたい。
長い歴史を持つ伝統的なボルドーのシャトー
ボルドーはフランスの一大ワイン産地で、シャトーと呼ばれる生産者が数多くひしめきあっているが、その中でも優れた赤ワインの銘醸地がメドック地区だ。そして、メドックの中でも最高クラスのシャトーが集結しているのがポイヤック村。
この村は、カベルネ・ソーヴィニョンをベースにした赤ワインの産地で、タンニンと骨格がある長期熟成のワインを生み出すと言われている。
1855年のメドック格付けで第一級の地位を得た5つのシャトーのうち3つが、ポイヤックにある。そして、一級シャトーにも引けを取らない、スーパーセカンドとして名を馳せているのが、二級格付けのシャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド(以下、ピション・ラランド)だ。
その歴史は17世紀にまで遡る。現在も斜め向かいにある、シャトー・ピション・ロングヴィル・バロンと元々一つであったが、1850年に、相続のため二つに分割された。その時、兄弟はピション・バロンを、姉妹はピション・ラランドを受け継いだ。ピション・ラランドは、近年まで女性オーナーが続き、また優美なワインスタイルからも、貴婦人と称えられていた。