嗅覚喪失「オミクロン株では少ない」 症例調査で判明

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新型コロナウイルスのオミクロン株は、ほかの変異株よりも嗅覚の喪失を引き起こしにくいとみられることが、米バージニア・コモンウェルス大学などの研究者による大規模な症例報告調査でわかった。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が始まってから最初の2年間、嗅覚喪失は感染が強く疑われる初期症状のひとつとされ、英国拠点の研究プロジェクト「COVID Symptom Study」によると16〜65歳の感染者のじつに60%にこの症状がみられた。

医学誌「Otolaryngology–Head and Neck Surgery(耳鼻咽喉科学・頭頚部外科)」に5月3日に掲載された論文によると、変異株追跡プロジェクト「CoVariants」が収集した新型コロナウイルス感染者61万6318人のデータを分析したところ、感染した場合に嗅覚・味覚喪失を引き起こすリスクは、元の株に比べアルファ株は50%、デルタ株は66%、オミクロン株は83%低いとみられることが判明した。

論文の筆頭著者であるダニエル・コエロは調査結果について、オミクロン株の感染者は嗅覚や味覚を失うリスクがかなり低いことを示すものであり、「朗報」だとコメント。新型コロナによる嗅覚喪失に関しては、うつの症状や認知症との関連性が指摘されていることから、軽微な症状として扱うべきではないと強調している。

コエロは、覚や味覚の異常があれば新型コロナに感染した可能性があるが、逆はもう真ではないということなので、嗅覚や味覚に異常がないからといって新型コロナにかかっていないと即断しないよう注意も促している。

4月に医学誌「JAMA Neurology」に発表された研究によると、新型コロナによる嗅覚喪失は嗅覚にかかわる脳の領域の損傷と関連していることが明らかになった。ただ、新型コロナが嗅覚喪失を引き起こす詳しいメカニズムはわかっておらず、この研究では、脳の一部の損傷はウイルスによって直接引き起こされたものではなく、この部位の炎症によって間接的に引き起こされた可能性があると結論づけている。

「Smithsonian Magazine」によると、米国では昨年11月時点で、新型コロナの後遺症とみられる嗅覚喪失を訴える人は約160万人にのぼっている。

編集=江戸伸禎

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