こうした流れの中で、早期に海外に拠点を移すことを考えるアスリートも増えています。東京五輪で銀メダルを獲得したスケートボードの開 心那選手もその一人。昨年、13歳のときに10年以内にはアメリカにパーク付きの家を建て、一日中スケートボードに没頭したいと話していました。30年前は想像すらできなかった発想です。
スケートボードの開 心那選手 / Getty Images
加えて、コーチの指導法もどんどん変化しています。かつては反復練習で体に覚えさせるような「根性論」などもありましたが、現在は褒めてモチベーションを上げることで、より早く体に染み込ませるという指導法が主流です。
──近年では、海外を中心にスポーツ選手のメンタルヘルスに関する課題も浮き彫りになってきていますね。
メンタルヘルスは個人の問題と捉える向きもありますが、スポーツ界でも重要視されるべき課題でしょう。
とはいえ、まだ日本と海外で、捉え方に違いがあると感じています。海外では休養は当然のこととされていますが、根性論の根強い日本では「メンタルの問題で休養するな」という声もあります。アスリートを守るためにも、日本社会の意識を変えていきたいですね。
IMGでは、必要に応じて契約アスリートにメンタルトレーニングの専門家をつけています。場合によっては、マネージャーがメンターのような存在になっているケースもありますが。特に子どものころから活躍しているアスリートは、「親離れ」や「コーチ離れ」をして自立する必要が出てくるタイミングもあるので、メンタル面のケアは重要です。
自分の人生を自分で考えて判断することも大事
──他に、日本のスポーツ界で課題に感じていることはありますか。
学校とアスリートの関係性です。これは日本固有の課題と言えます。例えば高校から大学への進学時に、「君はこの大学に進学しなさい」「君はこの社会人チームに入りなさい」などと、監督の一存で選手の進路が決まってしまうことも少なくありません。
もちろん監督も、選手個人のことを思ってのことだと思いますが、自分の人生は自ら決めるべきではないでしょうか。世界で通用するアスリートになるためにも、自分の軸を持つのはとても大切なこと。選手には幅広い選択肢を検討して、自分の人生を自分で考えて判断してほしいと思います。