「長いところルール」の悪用
国の基準では、輸入した生鮮食品には「原産国名」を、国産の食品には「都道府県名」などの表示を義務付けている。
しかし、2か所以上で飼育や栽培をした場合は、生育期間が長い場所を原産地として表示するという「長いところルール」が適用されるのだ。
例えば、中国で植菌し、日本で収穫したシイタケは「国産」になる。アサリはこのルールを悪用しているのである。
国産と国内製造の違い
ほとんどの方は意識していないかもしれないが、「国産」と「国内製造」はまったくの別物である。
「国産」は原材料が生鮮食品である場合に表示され、産地が国内であることを意味するが、「国内製造」は醤油や小麦粉などの加工食品が、国内で作られたことを意味する。
アメリカ産の大豆で造られた醤油は、造った場所が日本なら「国内製造」となるのだ。
真の問題は「安さ」への執着
日本人の「安さ」への執着は世界トップレベルといわれている。
東京大学の渡辺努教授の研究室で行ったアンケート調査で「スーパーでいつも買う商品が値上がりしているのを見たときどうするか」と尋ねたところ、アメリカやイギリスなどの消費者は値上がりもやむなしと受け止め、高くなった商品を買うと答えた。一方、日本の消費者はその店で買うのをやめ、元の価格で売っている別の店を探すと答えたそうだ。
「安さ」への執着が賃金を停滞させ、「安い国産」を実現するための産地偽装が大量発生しているのだ。
賢い消費者になろう
正当な国産商品を選ぶことで、国内の1次産業の発展に繋がることは間違いない。しかし、国産表示だからといって100の信頼を置いてしまうと、自分のイメージと異なる実態に気付けず、かえって国内の1次産業の衰退に繋がる可能性すらある。
私たちにできることは、国産表示に隠された裏側を知り、賢い消費者として買い物をすること。
正真正銘の国産を見極めるのは難しいかもしれないが、余裕のある人はホームページを見たりメーカーに問い合わせたりして、応援したいと感じた企業の食品を選ぶようにしよう。みなさんの選択1つで、国産食品の未来は大きく変わるはずだ。
【参考文献】
・ダイヤモンド・オンライン
・讀賣新聞
・「安いニッポン」現象 【渡辺努】
※この記事は、2022年6月にリリースされた「エシカルな暮らし」からの転載です。