2021年にFrod(フォード)は、LFPの利用を主として商用車向けに検討中であることを表明した。7月21日、同社は中国のCATL(寧徳時代新能源科技)と、2023年からLFPバッテリーセルの供給を受ける契約を締結したことを明らかにした。
LFPバッテリーは、航続距離よりもコストと耐久性が重要視される中国で非常に人気が高い。鉄とリンは世界中で大量に産出されており、LFPセルのコストは、現在多くのEVで使用されているニッケル・マンガン・コバルト(NMC)やニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)、あるいはニッケル・マンガン・コバルト・アルミニウム(NMCA)を使用したセルよりも30%以上安い。LFPバッテリーの耐久性はニッケル系と比べてはるかに高く、数千回の再充電にも最小限の性能低下で耐えることができる。CATLは、同社のLFPセルは100万マイル(160万キロメートル)持続すると主張している。ただし、ニッケル主体のセルと比べるとエネルギー密度は約30%低い。
ニッケルの価格は過去1年間で2倍以上高騰しており、主な理由はウクライナ侵攻だ。現在、ロシアは世界のニッケルの約10%、EVバッテリーで使用されているニッケルの20%を供給している。その結果、バッテリーが過去10年以上で初めて値上げされ、2022年、多くの自動車メーカーがEVの価格を上げた。
LFPセルはニッケル系と比べてエネルギー密度は低いが、モジュール構造を排除することで同じ体積に多くのセルを配置できる新たなセルバッケージデザインを採用することで相殺できる。Tesla(テスラ)は2年前から中国のモデルYおよびモデル3で実施しており、2021年末からは北米でもモデル3のスタンダードレンジモデルで採用している。おそらくフォードは、LFPバッテリーをスタンダードレンジモデルに使用し、NMCをロングレンジモデルで使い続けると考えられる。
CATLは、世界最大のEVバッテリー供給元であり、テスラに続いてフォードにもLFPを供給することになる。フォードは2023年初めから、マスタング・マッハEの一部でLFPの使用を開始し、F-150ライトニングでは2024年初期から採用する予定だ。これは同社が、2023年末までにEVの年間推定生産数60万台という目標を達成するために不可欠だ。