ビジネス

2022.07.26 08:00

民間人でも政策はつくれる。全国で生まれる政策起業家


地方政策起業家も増加へ


「東北では、地域活性化や持続可能な社会づくりで活躍する政策起業家が生まれている」。そう話すのは、政策起業家でNPO法人SET理事長の三井俊介だ。岩手県陸前高田市にあるSETでは、地元住民と外部の若者の交流を通じたひとづくり、まちづくりの取り組みをしている。

東日本大震災の被災地では、外部から多くの若者が移住し、復興支援活動から継続的なまちづくり活動に奮闘。一方、社会的に「社会起業」が浸透してきたこともあり、活動を持続可能にするためにビジネス化することが重要だといわれていた。


東北地方の政策起業家4人。左から一般社団法人まるオフィスの代表理事・加藤拓馬、NPO法人SET理事長の三井俊介、岩手県立大槌町大槌高等学校カリキュラム開発専門家、大槌町教育専門官を務める認定NPO法人カタリバ・ディレクターの菅野祐太、一般社団法人いわて圏の代表理事・佐藤柊平

「地方では、ソーシャルビジネスの枠組みだけでは難しい。行政と連携していると持続可能なビジネスモデルではないとして、なかなか理解されず、苦しんできた人たちが『政策起業家』という概念ができたことで新たなアイデンティティとなっている」(三井)

岩手県立大槌町大槌高等学校カリキュラム開発専門家、大槌町教育専門官を務める認定NPO法人カタリバ・ディレクターの菅野祐太、宮城県気仙沼市で、探究学習を通して中高生のアクションを応援している一般社団法人まるオフィスの代表理事・加藤拓馬、地域社会づくりを行う、県外にいる岩手県出身者やファン等をすべて「いわて圏民」ととらえて、関係人口、移住定住の取り組みなどを行う一般社団法人いわて圏の代表理事・佐藤柊平がその代表的人物だ。

震災後に移住して活動する共通点をもち、それぞれの分野で行政とともに、地域活性化に挑んでいる。

「ローカルだと、いかにまちづくり全体につながるかという視点や、行政と『共創』していくかという視点が重要になる。地方だと政策を変えられる人が行政以外に少ないのが現実だ。だからこそ、我々のような政策起業家たちが増えていくことが、地方分権化の流れのなかで重要だと思っている」

全国で生まれ始めている政策起業家が増加する流れは、社会課題解決や地域活性化のための回路となる政策がより多く実現し、社会にとってポジティブなインパクトをもたらすことにつながるだろう。

文=フォーブスジャパン編集部 写真=小田駿一(P56)、飯塚麻美(P57)

この記事は 「Forbes JAPAN No.097 2022年9月号(2022/7/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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