こうした結果が浮上した理由の1つは、サセックス大学の研究だった。そして同校の別の研究チームが同じテーマで新たな研究に取り組み、同様に悲観的な考えを提示した。研究者らは、ハイブリッドワークが炭素排出量を減らす効果はほとんどなく、リモートワークでは社員の移動がオフィスで仕事をしていたときよりも増えているからだと指摘する。
増える移動距離
研究チームは、パンデミック以前の移動パターンに着目し、(英国の)リモートワーカーは、一般に移動の回数はオフィスで働く人々よりも少ないが、毎週それ以上の距離を移動していることを発見した。この直感に反する結果の理由は、リモートで働く人々は、オフィスから遠くに住む傾向にあるからだという。その結果出社時の移動量の合計は、オフィスの近くから毎日通勤する人よりも多くなる。さらに、リモートで働いていると、人はカフェや買い物に行くなど、余分な移動が増えるようでもある。
これは、1人以上がリモートで働く世帯では特に顕著であり、研究者はこのことから、同居人にリモートワーカーがいると、それ以外の世帯人員の外出も促されると考えている。
「研究の結果、リモートワークには、移動や炭素排出の減少を打ち消すような、意図しない影響があることがわかった。週に2〜3日しか通勤しないなら、職場から遠くに住もうと思うことが考えられる」と研究者は説明する。「そして、日中自宅で仕事をしていると、買い物に行ったり、気分転換に外へ出るなど、余計な移動が発生することもある。リモートワークの炭素排出目標への寄与を考える時は、こうした可能性を考慮する必要がある」
貢献はほぼゼロ
新型コロナのパンデミックによって、前例のない規模の人々が在宅勤務をするようになっただけでなく、炭素排出量と大気汚染も急速に減少したことから、リモートワークが地球環境に貢献しているという論理的予測があった。
同研究によると、パンデミック以前の15年間について調べたところ、リモートワークによる移動が排出量に与えた影響は無視できるほど小さかった。フルタイムのリモートワーカーはオフィス勤務者よりもわずかに移動が少なかったが、パートタイムのリモートワーカーは明らかに移動が増えていたためだ。