1ドル「150円」も想定?円安進行食い止めで予想されるシナリオ

デザイン=長谷川亮輔


1ドル=150円にまで加速する根拠は複数


円安が進行する理由は日米の金利差拡大だけでない。低金利の円を調達し、それを元手に金利の高い通貨を買う「円キャリー取引」の動きが加速しているほか、日本の貿易赤字の継続も挙げられる。さらに、日銀は長期金利の上昇を抑えるため、国債の「指し値オペ」を0.25%で「原則毎営業日実施する」と表明。“力づく”でも「金利を上げません」といったメッセージを打ち出している。

これらの複数の円安根拠を考えると、1998年以来の安値水準である1ドル=147円台まで、さらに勢い付いた場合は150円までの下落は想定の範囲内としておくことが良さそうだ。

ただ、この先は円安による家計へのダメージに焦点が当たることから、円安を食い止める方法として「為替介入」の議論が一段と高まるだろう。為替介入には2種類あり「口先介入」と本気でお金を使って動かす「為替介入」がある。

口先介入は、日銀や政府が何かこれから対策をするかもしれない……といったことを「匂わせる」やり方だ。政府とマーケットの間で駆け引きが行われるのだが、これにはある程度、効果がある。

過去の「口先介入」で良い例は、2015年6月。円安米ドル高が進み、1ドル=125円まで進行したが、黒田総裁は「これ以上の円安はありそうにない」と発言したことで、円安基調に終止符を打った。

いわゆる黒田ラインと言われ、単なる口先介入でも十分に威力があることを示す例となった。しかし効果や継続力といった意味では弱い。

そこで次に、各国政府や中央銀行が為替市場にお金を投入して売買を行う本気の「為替介入」がある。この為替介入にも日本単独で行う「単独介入」と、アメリカと一緒になって行う「協調介入」があるが、効果があるのはアメリカと一緒に行う介入だ。

円安の進行が止まる条件は?


日本銀行
Shuterstock

過去3回の「協調介入」が1ドル=140円以上の時に実施されたことは、今の状況下でも参考になるだろう。現段階で日米の協調介入の実現は薄いと言われているが、もし実行された場合は1ドル=150円をタッチしないシナリオも十分に考えられる。

資金を使う為替介入の実行はすぐには難しく、段階を経て進むことから、複数回の口先介入を経て、日本だけで行う単独介入、日米の協調介入と順を追って進む可能性がある。

そして、円安による家計へのダメージを考えた際に、エネルギー価格の高騰を押さえ込むことができる「原発再稼働」も現実味を帯びてきている。ウクライナ危機による燃料供給の不安もあり、電力不足へのおそれから節電要請を出しているが、経済を回すうえでは良策ではないし、停電は命にも関わるだけに、絶対に避けなければならない。この文脈で「再稼働」となれば、円高に振れる可能性が高い。

黒田総裁の任期は来年4月まで。

ポスト黒田の総裁による金融政策が変更される可能性もある。シナリオを複数想定しておくことが、今求められているように思う。

文=馬渕磨理子 編集=露原直人

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