インポスター症候群にある男女差
インポスター症候群が1978年に初めて提唱された際、焦点が置かれたのは、優秀なキャリアを持つ女性だった。女性の方が男性よりもインポスター症候群になりやすいことは、ヤングスタウン州立大学の2018年の調査でも示されている。また、自分はインポスターだと感じているときの反応は、男女で大きく異なる。
自分をインポスターだと考えている男性は、ネガティブなフィードバックに対し、非常にネガティブな反応をする傾向にある。一方、女性にはこうした傾向はなく、むしろ努力を増やすようになる。
インポスター症候群に関する研究の多くでは、インポスター症候群の人は社交スキルが高い場合が多いことが示されている。テューフィクがこの点を深く調べたところ、インポスター症候群の人は一貫して、周囲から要領が良く有能だと思われていた。
患者との関係が改善
この傾向は、医師の研修プログラムでみられた。研修参加者のうち、インポスター症候群の感覚がある人は患者との関係が最も良い傾向があった。テューフィクによると、インポスターの感覚がある医師は対人関係に優れ、共感性があり、話を聞くことや情報も引き出すことがうまいという評価を患者らから受けていた。
インポスター症候群の医師は、アイコンタクトをより長く取ることが多く、手を開くジェスチャーやうなずきを多用していた。患者の評価が高かったのは、こうした要素が原因とみられる。
一方、別の重要な点として、インポスター症候群は永続的に続くものではないとみられることがある。自分の役職に慣れ、立場を確立するにつれ、人はこうした疑念を拭い去ることができるようだ。
テューフィクは、今回の研究結果にはインポスター症候群を軽視したり、弊害がないと主張したりする意図はないと説明。対人関係で埋め合わせができない場合、インポスター症候群は大きな悪影響を生む可能性があると指摘した。
しかし、この研究が示した重要な点は、インポスター症候群が絶対悪であるという認識を見直すべきだということだろう。インポスター症候群を埋め合わせようとする努力は、ポジティブな結果をもたらすかもしれない。