インポスター症候群の思わぬ効能 対人関係が改善

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自分は詐欺師(インポスター)であると感じてしまう状態を指す「インポスター症候群」という言葉は、1978年に初めて使用された。自信喪失につながることから、通常は完全にネガティブなものと考えられている。

インポスター症候群を経験したことがある人は70%に上ると推定されている。オーストリア・ザルツブルク大学が2016年に発表した研究結果では、これがキャリアに大きな影響を与え得ることが示された。

同研究では、インポスター症候群の人がさまざまなネガティブな考えや感情を抱えることが示された。うつ病を患う可能性も高くなり、たとえ成功を収めたとしても、将来失敗して自分の価値のなさが明らかになるのではという不安を抱える。

エドテック(教育技術)企業ワンデー(Oneday)の共同創業者、タラス・ポリシュクは「創業者は常に自分を疑っている。特に、自分よりも経験のある顧問や同僚に囲まれていると自己疑念は大きくなる。当社のアドバイザリーボード(諮問機関)には10億ドル(約1300億円)規模の事業を築き上げた経験がある人ばかりで、たとえ自分の方が顧客の本当のニーズをより深く理解していると感じていたとしても、こうした人の助言にただ従いたくなることがある」と語る。

最高を目指す努力


しかし、インポスター症候群は悪いことばかりではない。先述の研究では、詐欺師であることがばれることの恐怖から、懸命に努力する傾向があることが示された。また、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が2021年に発表した論文の結論も同様で、インポスター症候群の人は自分の短所を埋め合わせるために一層努力したり、周囲と協調したりする傾向があると指摘している。

論文を執筆したバシマ・テューフィクは、職場で自分がインポスターであると感じる人は「他者志向」が強くなり、対人関係で良い評価を得るようになると説明。インポスター症候群が本質的にネガティブで有害なものだとの考えは見直す必要があると指摘している。
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編集=遠藤宗生

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