ドバイ万博日本館を手掛けた永山祐子が考える「建築の豊かさ」とは

建築家の永山祐子氏(左)とUrban Cabin Institute パートナー山田理絵(右)


山田:ご自身が高まったと感じた旅はありましたか?

永山:仕事絡みですが、各国の工場リサーチによく行くんです。数百年前のプリミティブな方法で砂型に鉄を流し込んで型をつくっているタイの鋳物工場だとか、中国のAppleに納めているような、巨大なガラスをつくる最新鋭の工場など。

各国のものづくり現場に行くと、すごく興奮します。そういうところから発想したり。実際、いま歌舞伎町で超高層ビルを進めていますが、各国を回って得た刺激をもとに、外装などはほとんど国外でつくっています。



山田:ファッションやアートも、そうしたインスピレーションになっていますか。

永山:ファッションは自分の気分を上げてくれます。すごく気に入った服で大事なプレゼンに行くと、上手くいきそうな気がします。今日の服は、「CFCL」というブランドのペットボトルからできているものです。サステナブルで見た目よりも軽く、着心地が良く、シワにならないので旅行にも持って行きやすいんです。

アートは自分の家にも結構飾っていますが、自分の生活している時間の流れや文脈と全く違う文脈の存在が日常の中にあるっていうことが、すごく豊かな気持ちにしてくれます。庭も、私たちの生活と全然違うリズムが流れていて、そういうものが近くにあるんだと感じる豊かさみたいなのがあります。

山田:このBlack Cubeの前の庭も、昨今の洪水や温暖化などの環境問題は、地面がアスファルトで密閉されて、地中にガスが溜まっていることが原因ということで、造作的にせず、2メートルぐらい掘って水脈を通したんです。大通りから裏の川に向かって水脈が大動脈のように通っていて、そこから土圧や水が全部流れるようになりました。それにより、この辺一帯も環境が改善されていくそうです。

今はそういう風により良くしていくことの方が、形を凝って美しくつくり込むというよりも本当に豊かに感じる時代になったと感じています。

永山:水の流れや空気の流れは本当に大事だと思います。私達も建築設計するときにデザインの中に取り入れています。

山田:それをドバイでは本当に美しく表現されましたね。そういうところをこれからもたくさんつくっていらしてください。世界中の人が観に訪れると思います。

文=山田理絵

ForbesBrandVoice

人気記事