ドバイ万博日本館を手掛けた永山祐子が考える「建築の豊かさ」とは

建築家の永山祐子氏(左)とUrban Cabin Institute パートナー山田理絵(右)

住居や社屋、ホテル、駅、美術館……ときにダイナミックに、ときに繊細に私たちの感覚を刺激する建築は、アートやファッション、食と並んで、世界のハイエンド層の関心を強く引くキラーコンテンツの一つ。

ハイエンド・ブランディング・プロデューサーの山田理絵が、鎌倉にある「BLACK CUBE」にハイエンドな価値を提供しているトッププレイヤーを迎え、ビジネスの高付加価値化のヒントを聞き出す対談連載。

第7回は、2020年ドバイ国際博覧会で日本館を手掛けたことが記憶に新しい建築家の永山祐子氏に、建築が生む豊かさや高価値の創り方について聞いた(このトークの対談全編はこちら)。


山田:ドバイ万博の日本館について、コンセプトを教えていただけますか?

永山:万博のテーマは、「コネクティングマインド クリエイティングフィーチャー」でした。その中の「コネクト」に関して、一見私たちにとって遠く感じる中東が、実は昔シルクロードで繋がってたんじゃないか……と、二つの国のつながりについて思いを馳せた時に、いくつかのキーワードが浮かびました。

一つは「文化」。日本の組子も向こうのアラベスクもすごく幾何学的な模様で、それらももしかするとシルクロードを通して影響し合っていたかもしれません。

もう一つは「水」。中東の方が日本に持つイメージで上位にくるのが、四季溢れる美しい「自然」と「技術」。その二つを結びつけるものとして、「水」があるんじゃないかと思い、水盤と幾何学模様を考えていったんです。

山田:日本の水技術は、中東にも渡っていますよね。日本館を写真や映像で拝見しましたが、澄み渡るようにピュアだけれど存在感があり、軽やかで……現地でご覧になれた方は幸せでしたね。

永山:風を感じていただけたらと、サステナブルの観点もすごく考えました。水盤の位置と、風の向きを考慮して、半外部に冷された風が入るようにしたり。陰影も一つのテーマで、日差しや太陽の動きに合わせてどんな配置にしたら良いかも全てシミュレーションしました。


(c)2020年ドバイ国際博覧会日本館

山田:水と風を巧みに利用してサステナブルでデザイン性の高い建築を実現されたのですね。現地の反応はいかがでしたか?

永山:日本的な繊細さ、光と影、日本の折り紙とか障子とか、そういう日本的なものを感じ取っていただけたと思っています。

山田:どのような方々が日本館を訪れましたか?
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文=山田理絵

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