ドバイ万博日本館を手掛けた永山祐子が考える「建築の豊かさ」とは

建築家の永山祐子氏(左)とUrban Cabin Institute パートナー山田理絵(右)


山田:建築は視覚、感覚などさまざまな角度から私たちに刺激を与えてくれますが、つくり手が考える建築の豊かさや空間性とは何でしょう?

永山:建築をつくるには、予定地に2年ほど通ってリサーチするので、その土地を深く知ることになります。また住んでいる方やプロジェクトでご一緒する方との繋がりで、全然違う方向に発展する場合もあります。例えば、愛媛の宇和島で旅館のリノベーションをしたときは、真珠の生産者が新しいジュエリー創作を考えていて、私がプロデュースをしました。

建築を通していろんなものに繋がるなと私自身が感じていますし、訪れる方にも、建築を通して新しい繋がりが出来たらいいなと思っています。



山田:先のドバイの作品を見た時に、私「こういう服を着たいな」と思ったんです。こういうジュエリーだったら素敵だな、とも。建築って、鑑賞の対象でもあるし、中に入って体感することもできる。すごく立体的な楽しみ方ができるところが、私が感じる建築の豊かさです。

永山:今回日本館のユニフォームを担当された「アンリアレンジ」の森永さんが、私のデザインをすごく理解してくださって、そこからインスパイアされた衣装をつくってくださいました。

私たちもコラボレーションをすごく大事にしていて、先ほどお話した宇和島では、アーティストと漫画家と私の3人で一個の泊まれるインスタレーションをやったことがあります。一人で何かを考えていると閉じていってしまう気がするのですが、人とやっていると広がっていく。それはすごく私にとっては豊かな経験でした。

山田:日本の商品やサービスは質も創造性も高く、唯一性もあるのに、世界的なハイブランドといえばフランスやイタリアが多く、日本は価格においてもリーズナブルです。もっとつくり手の価値に見合うような、高付加価値化をしなければいけないと思うのですが、その辺りお考えはありますか?

永山:まさにそれを最近感じています。建築家も海外に比べるとだいぶ報酬が低いです。日本人は謙虚すぎるところがあるのかもしれないですね。今おっしゃったように世界のレベルで見たら、日本のクリエイティビティは全然引けを取らないどころか、より良いものもあるのに、何となく低く見てしまっているところがある。自分では難しいので、きちんと価値づけして世界に出してくださるようなプロモーターがいた方がやりやすいのかなと思います。

山田:海外の場合は価値づけのプロフェッショナルがいますね。アート界では欧米のギャラリーがアーティストの価値基準もプライスも決めて、なかなか日本人が入っていけませんが、建築はいかがですか? 日本人の建築家は活躍しているイメージがありますが。
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文=山田理絵

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