ドバイ万博日本館を手掛けた永山祐子が考える「建築の豊かさ」とは

建築家の永山祐子氏(左)とUrban Cabin Institute パートナー山田理絵(右)


永山:王族系や各国の要人など、VIPの方々が毎日のようにいらっしゃいました。本当は皆さんに通ってもらいたかった道なのですが、VIPの方々には水盤を歩いていただきました。その時に水面(みなも)の動きと反射している建物と全体像をよくご覧になられていました。

感想として、「すごく美しい」と建物全体の美しさを口にする方が多かったです。中東で建物をつくるのが初めてで、現地でどれぐらいのクオリティのものが建てられるか分からなかったので、「ボールジョイントシステム」というプラモデルのような、グローバルなシステムを使いました。素材も日本特有のものではなく、世界中どこでも手に入れられるもので日本らしさを出しました。

山田:建築の現場はとてもグローバルなんですね。システムはドイツのものとか?

永山:はい。インドやスリランカなど世界中から職人さんがやってきて、特別な技術力を持っていなくても精度の高い建物をその場で期間内につくれました。また、万博が終わる度に、毎回巨大なゴミが出ることに疑問があったので、最初から「リユースしたい」と思っていました。

組み立ても解体もすごく簡単にできるので、実は今、日本に持って来ようというプロジェクトが、施工会社と輸送会社のご協力で進んでいます。


(c)2020年ドバイ国際博覧会日本館

山田:日本でも見ることができるのですね。組み立てが容易ということは、展覧会として回遊もできますね。向こうで出会った方々の生活はいかがでしたか?

永山:ドバイは自国民の割合が10%以下ととても低く、ビジネスのハブとなっています。現地の方は権利で潤っているので、皆さん非常に大きな邸宅に住んでいます。家族をとても大切にするので、敷地内に父親の家、息子の家と豪邸が点在し、大きなパーティールームに何十人も招いてホームパーティーをするという感じです。

山田:そういう方々は、どのような価値観を持っているのでしょう?

永山:日本の建築に興味を持ち、共感して勉強されている方に会いました。とても文化度が高く、アートフェアのアドバイザーもするなどリサーチもされている。お金も時間もたっぷりあるのでよく日本に来ていたそうです。

山田:自分を高め、深めるためにお金を使うという価値観ですね。ドバイで、ご自身の建築の参考になるようなものはありましたか?

永山:ドバイは建国50年と若い国で、人口比率も若い層が多い。そして彼らのマインドは、とにかく前へ前へ進もうという気持ちが強い。日本はどちらかというと守りに入っているところがありますが、彼らのパワフルさみたいなものは、やっぱり万博全体のエネルギーにも表れていて、行くとちょっと元気になりましたね。

山田:私は小学校がベイルートだったんですが、中東の人って独特の温かさがあって、子供思いですよね。

永山:ファミリーをすごく大切にしているので、ショッピングモールに行くと一族で歩いていたり、みんなでご飯を食べていたり、けっこう大人数で何かをしている風景が多かったですね。すごくいいなと思いました。
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文=山田理絵

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