経済・社会

2022.06.26 07:30

集団の安全保障を脅かす、紛争下で増加する性的暴力

2022年4月21日:ベルリンの連邦経済気候行動省の前での戦争における性的暴力に対する反戦デモ(Belikova Oksana / Shutterstock.com)

6月19日は、「紛争下の性的暴力根絶のための国際デー」だった。2015年の国連総会で採択されたこの国際デーの狙いは、紛争に関連して生ずる性的暴力(conflict-related sexual violence:CRSV)の問題に関心を集めることにある。

取り組みの中心は、「紛争と直接関連しているか、あるいは、(時間的、地理的、因果関係的に)間接的に関連して、女性、男性、女児、男児に対して行われる、レイプ、性奴隷、強制売春、強制妊娠、強制中絶、強制不妊、強制結婚や、それと同程度の重大性をもつ、あらゆる性的暴力」だ。

国連が強調するように、CRSVは、集団の安全保障を脅かすひとつの独立した脅威だ。国連は、CRSVが2021年に増加した点を指摘して、こう述べている。

「外交的・政治的な手段によらず軍事的手段に訴える紛争が続いており、多数の人が居住地を追われ、市民が性的暴力にさらされる危険性が高まっている。さらに、世界的なパンデミックのさなか、格差の拡大、軍備の強化、シビック・スペース(市民が自由に活動できる公共的空間)の縮小、小型武器の違法流通なども、紛争に関連した組織的な性的暴力の蔓延を加速させている」

特に注記されるべきは、平和構築に携わる女性や女性人権活動家、さらには、CRSVサバイバーの窮状を浮き彫りにして、その権利を擁護する取り組みを行う女性活動家たちなどが暴力の標的になっていることだ。彼女たちは、報復的行為としての性的暴力やハラスメントの被害を受けている。

たとえばミャンマーでは、2021年2月以降にCRSVが増加しており、デモ参加者やジャーナリストばかりか、子どもにまで性的暴力を働いたとして、同国の軍や警察が告発されている。

ミャンマー軍からのCRSV被害を受けた多数のロヒンギャ族が、現在はバングラデシュのコックス・バザールにある難民キャンプで暮らしているが、身体的・心理的な残虐行為による後遺症を克服するために必要な医療支援がなかなか受けられずにいる状況だ。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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