現行制度の不公平感
どの国のREDD+クレジットも2005年以降、企業ではなく国に対して販売されるようになった。現在の課題は、先進国や企業に大規模に購入してもらうことだ。ドイツ、ノルウェー、英国はこの市場で最も活発だ。
中央アフリカのガボンは、熱帯雨林を保護している最も優れた国のひとつだ。約88%の森林が残っており、年間0.05%しか減少していない。その森林は年10億トンのCO2を吸収しているという。政府がプロセスを管理し、ノルウェーはそこからクレジットを買っている。
ガボンはアフリカでも有数の産油国で、その産業が雇用と繁栄をもたらしている。しかし、ガボン政府の気候変動担当特別顧問であるタンギー・ガホマは、産油量が減少していると指摘する。そのため、この国の森林は若い人にキャリアを提供できるような経済エンジンにならなければならないのだ。
中米のベリーズは、「ソブリンクレジット」を敬遠し、特定の地域やプロジェクトに適用される「ボランタリークレジット」を認めるという現行制度の不公平さを象徴する国だ。例えば、ベリーズの国立公園やジャガーを保護するためにボランタリークレジットが発行されている。しかし、そのプロジェクトは森林を保護し、労働者を雇用するための収入となる金をほとんど受け取っていない。このような取引は個々に交渉され、政府はそれをコントロールすることができない。
土地の存続には約13.6兆円必要
パリ協定では、2050年までに気候変動を抑制すること、つまりCO2の排出と除去が互いに相殺されることを目標としている。現在、年間約50ギガトンものCO2排出量は、部分的に相殺されている。しかし、熱帯雨林諸国は2005年から今日までの間に9ギガトンものCO2を相殺している。
熱帯雨林の国々は、その土地の存続を確保するために推定1000億ドル(約13兆6000億円)を必要としている。炭素市場はその資金調達の一部を担う。しかし、この取引システムは認定を受け、国連の承認プロセスを経なければならない。監査法人のアーンスト・アンド・ヤングは現在、REDD+をより強固で信頼性が高く、予測可能なものにするために活動している。
11月にエジプトで開催される気候変動会議でソブリンクレジットを強化すれば、熱帯雨林諸国にとって切望される歳入を生み出すことになる。2015年から2017年までパナマのエネルギー大臣を務めたエミリオ・センプリス氏は、自国が2034年までに60億ドル(約8150億円)の収入を得られると説明し、それは牧場に奪われた土地を回復するための資金になると述べた。「このインセンティブの法律により農村地域で数千の雇用創出が期待される」
REDD+を考案した熱帯雨林諸国連合のマネージングディレクターであるフェデリカ・ビエッタは「行動できる時間は限られている。森林はその一部だ。森林がなければ世界の気温上昇を1.5℃に抑えるという目標を達成することはできない」と指摘する。
話し合いの時間は終わった。今年の会議でREDD+に完全に権限を与える時がきたのだ。REDD+は木を守り、CO2汚染を軽減し、熱帯雨林の国々に報酬を与え、経済成長をもたらす富を提供する。熱帯雨林は気候変動に対する費用対効果の高い解決策であり、自然エネルギーと同じように尊重されるべきものなのだ。