「ジェフの影」と呼ばれるCEO付きの参謀を務めたコリン・ブライアーと、バイスプレジデント、ディレクター等を長年担ったビル・カーが、「アマゾンの働き方を個人や企業が導入する方法」を解き明かした、画期的な一冊だ。
以下、企業にとって生命線ともいえる「採用」について語った部分を、ダイヤモンド・オンラインの記事から抜粋して紹介する。
無秩序な採用面接が横行している
アマゾンの元バイスプレジデントからこんな体験談を聞いた。
彼はアマゾンに来る前に、数十億ドルの売上を誇る国際的テクノロジー企業のCOO(最高執行責任者)のポジションに応募した。
面接を行ったCEOは、次々と脈略のない質問をぶつけてきた。どれも採用の判断に役立ちそうにない内容だった。そしてCEOは、長い沈黙のあとにこう言った。
「あなた自身について、履歴書を読んだだけではわからないことを何か話してもらえませんか」
そのCEOは、こう言っているのに等しい。「わが社はどんな人材を求めればよいのか、わかっていません。どこを見て評価するのがいいか、教えてくれませんか?」(中略)
採用は企業の命運を左右する
重要なポジションの採用は会社の業績を大きく左右する。採用活動に必要なコストや労力を考えれば相当なものだ。
それなのに、採用に関して、しっかりした分析的手法を確立していない企業が多いことには驚かされる。採用は企業にとって生命線ともいえる意思決定なのに。
上記で紹介したアマゾンの元バイスプレジデントが、テクノロジー企業のCOOに就任していたら、会社の業績を大きく改善するような戦略的決断を下すことができていたはずだ。
仮の話として、そのテクノロジー企業のCEOが、同じくらい重要な別の決断を下す場面を想像してみよう。
たとえば、新製品の生産工場に数百万ドルの投資をすべきかどうかという決断だとする。彼は経営チームを集め、詳細な分析を指示するに違いない。そして、正しく判断するためには、どんな情報が必要で、何を問うべきか、慎重に考えるだろう。会議のための準備に何時間もかけるはずだ。
ところがこのCEOは、採用面接には何の準備もせずに無手勝流で臨んだ。候補者が適任かどうかを判断するのに必要な情報は何かということさえ考えていなかった。
CEOはこの怠慢によって、応募者を評価できなかっただけでなく、将来の貴重な戦力を失った。その後アマゾンのバイスプレジデントになった彼は、この面接での経験を1つの判断材料として、自ら応募を取り下げたのである。(中略)