DIVERSION 技術転用型モデル
保有する技術や経営資源を別の領域に転用することで新しい製品やサービスを生み出すモデル。技術開発もここに含めた。
深井喜翔|KAPOK JAPAN|大阪府吹田市
──木の実でつくるサステナブルファッション創業76年のアパレルメーカー、双葉商事の4代目社長となる深井喜翔が立ち上げたサステナブルファッションブランド「KAPOKKNOT(カポックノット)」。主力製品は、5mmの薄さでダウン並の保温力をもつコートで、主な素材にはカポックという東南アジアに自生する木の実から取り出した天然繊維を使用している。
カポック繊維は短いため糸にすることが難しく、従来はマットレスそのものを使用するわけではないので、森やクッションの詰め物など用途が限られてい林伐採の必要もない。栽培に農薬や化学たが、これを独自技術で商品化につなげた。肥料も不要だ。需要が増えれば、東南アジカポック繊維はコットンの1/8の軽さで、木アでの雇用創出や森林保全にもつながる。
深井喜翔◎1991年生まれ。慶應義塾大学卒。不動産会社や繊維メーカーを経て、家業の双葉商事に入社。2020年、KAPOK KNOTの運営を軸とするKAPOK JAPAN設立。
豊澤一晃、茂見憲治郎|トヨコー|静岡県富士市
──老朽インフラを長寿化するレーザー工場屋根の塗装・補修から事業をはじめ、塗料と樹脂を組み合わせた独自の修復技術「SOSEI工法」によって顧客基盤を確立。さらに、2008年から高出力のレーザー照射による熱でサビや塗膜、有害物質を除去する装置「CoolLaser」を開発している。橋梁などの老朽化が進むインフラを維持・延命化するための装置で、これを活用したクリーニング事業を提供。
22年には施工業者への装置レンタルも開始する予定だ。レーザー活用のインフラメンテナンスは世界的に技術開発が進んでいない新たなマーケットでポテンシャルが大きい。トヨコーは豊澤一晃と茂見憲治郎の2トップ体制で、屋外レーザー施工の安全基準や商品規格などルールづくりを含めて市場を牽引している。
豊澤一晃◎デザイン業界で活躍後、2003年にトヨコーヘ入社し、社長就任。(写真右)
茂見憲治郎◎デロイトトーマツグループを経てトヨコーに入社し、社長就任。(同左)
久保昇平|関西巻取箔工業(KANMAKI)|京都府京都市
──脱炭素時代の印刷ソリューション西陣織に使われる「金糸」をルーツとする工法で顔料箔(コーティング箔)を手がける1952年創業のものづくり企業。もともと繊維や製本分野向けに提供していた技術を応用し、市場規模が大きい自動車や家電などの主にプラスチック工業部品の加飾に対応する「熱転写顔料箔」を提供。フィルム状のインクを熱で圧着転写する仕組みで、色のばらつきを抑えて、塗膜を1/1000mmレベルで制御することができる。
最大の特徴は、加飾時にVOC(揮発性有機化合物)を使用しないことだ。安全性が高く、従来は不可欠だった乾燥工程などを省略できるため、生産性向上と環境負荷軽減を両立した脱炭素時代の新たな印刷ソリューションとして拡販を進めている。
久保昇平◎1980年、京都府生まれ。京都産業大学在学中から舞台演出家・脚本家として活躍し、2006年に起業。12年に家業の関西巻取箔工業に入社し、取締役COO就任。